「悔いはあるけど後悔はない」――最終回を迎えた、漫画『プロ野球選手・山本昌物語』
球界最年長、現役最多勝利の男が、ついにユニフォームを脱いだ。中日ドラゴンズ・山本昌にとって、プロ野球生活32年間とはどのようなものだったのだろうか。
2015/10/09
憧れの職業を続けたかった
10月7日、山本昌はマツダスタジアムで行われた広島戦で、現役最後のマウンドに登った。打者1人だけの限定先発登板。カープの1番打者・丸佳浩をスクリューボールでセカンドゴロに打ち取った。
この試合は、山本昌にとってプロ野球選手通算581試合目の登板だった(うち先発は514試合)。だが、最後の最後まで試合を楽しむことはできなかったという。32年間も現役生活を続けてきた選手の言葉だとは思えないが、「緊張しやすい性格だから、試合で投げること自体があまり好きではない」そうだ。
では、山本昌はなぜ長きにわたって野球を続けてきたのか。それは練習している時が好きだから。もっと正確に言えば、練習をしながら「プロ野球選手である自分」を実感するのが好きだったのだ。
子どもの頃から、プロ野球選手になることが夢だった。その夢を実現させた山本昌は、少しでも長い間、憧れの職業につけた自分でい続けたかった。50歳まで現役を続けたレジェンドの原動力は、ただそれだけだったのだ。
引退会見の最後。山本昌は、記者から何も質問されていないのにボソッとつぶやいた。
「あ~ぁ、長い夢から覚めちゃった…」
32年間という長期にわたって連載されてきた漫画『山本昌物語』は、夢オチという、いかにも山本昌らしいクラシカルなエンディングで幕を閉じた。