引退試合で感じた変化。『在籍時の実績より、野球人として称えた』森本、木佐貫、中嶋【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#13】
ファイターズは9月30日、10月1日の本拠地最終戦シリーズ(ロッテ戦)で木佐貫洋、中嶋聡の引退試合(セレモニー)を開催。また、先週末には元ファイターズ戦士の森本稀哲のセレモニーも西武プリンスドームで行われた。
2015/10/03
少しだけライオンズファンになった
例えば「思い入れ」ということなら、僕はひちょりにいちばん「思い入れ」がある。西武ファンではない僕が永久保存版のDVDに録画している。西武ファンじゃないのに緊張しながらその日を待っていた。
ひちょりは西武ではあんまり活躍していない。
その前の横浜→DeNAでもあんまり活躍していない。ひと昔前だったら引退試合やセレモニーは組んでもらえなかったと思うのだ。キャリアのうち最も華やかな部分はファイターズ時代のものだ。つまり、これは何かというと、西武は在籍時の実績よりも「公的なひちょり」をセレモニーに値する存在として遇してくれたことになる。
引退試合は本当に感動的だった。
ダダ泣きした。ひちょりは西武で愛されていた。それはたぶん横浜→DeNAでも同じことだ。彼の人間性だと思う。野球人として紡いだ絆だと思う。8回裏、「ひちょりさんに回せ」を合言葉にライオンズはつないでつないで、本当に一打席回してくれた。僕は少しライオンズのファンになった。
引退セレモニーではご家族がグラウンドに並んで、日暮里の焼肉屋「絵理花」を思い出した。「絵理花」はひちょりの実家が経営する店だった。僕はその常連だった。
ファイターズ入団をきっかけに足繁く通うようになり、店の壁面にファイターズグッズやキャラクターシールを毎回ちょっとずつ貼って、仲間とコツコツ「焼肉スポーツバー」状態に変えていった。
たぶんあまり知られてないけど、あの店に10代の頃の山崎康晃(DeNA)が親御さんと来てたんだ。山崎君はひちょりに憧れて帝京高校に行ったんだよ。
セレモニーは選手らの惜別コメントに移り、それがまた球団の垣根を超えて、ビジョンに映し出される。で、ついには稲葉篤紀が花束を抱えて登場した。
これは決して西武だけで完結したセレモニーじゃない。
それをまた対戦相手の楽天ファンまでが「我がこと」として温かく見つめていた。野球ファンの意識が変化してきたと思う。
僕らは引退する選手を見送りながら「あの頃の自分」ともサヨナラする。球団の垣根はあまり関係ないかもしれない。
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