真中采配が的中。ヤクルトVの要因は「リーグ一の救援陣」と「山田・川端・畠山の打順変更」【広尾晃の「ネタになる記録ばなし」】
ブログ「野球の記録で話したい」を運営中で『プロ野球解説者を解説する』(イーストプレス刊)の著者でもある広尾晃氏。当WEBサイトでは、MLBとNPBの記録をテーマに、週2回、野球ファンがいつもと違う視点で野球を楽しめるコラムを提供していく。今回はヤクルト優勝の要因についてだ。リリーフ陣の奮闘と打線を組み替えた采配が的中したことがデータから見えてくる。
2015/10/03
生還率が高い2015年
打者を見ていこう。
セリーグ、ここ3年の打率、本塁打、打点、生還率(得点÷安打、四死球)をまとめた。
前述のように今季のセリーグは投高打低に推移しているため、年度ごとの数字の比較はあまり意味がない。リーグでの順位に注目したい。
ヤクルトは昨年リーグ有数の攻撃力を有していた。広島とともに打撃陣ではトップクラスだった。
山田哲人がブレークし、雄平、畠山和洋、川端慎吾も3割を打っていた。打線は一流だったのだ。
今季も好調を維持。注目すべきは生還率の高さだ。投高打低の中、他球団が生還率を大きく落とす中、ヤクルトはほぼ昨年並みを維持し、2位以下に大きな差をつけた。
打線が好調なだけでなく、それが得点に結びついていたのだ。
浮上のきっかけは2番~4番の固定
これはシーズン中に真中満監督が下した決断が大きい。
真中監督は、オールスター前まで山田哲人、畠山和洋、川端慎吾という3人の主力打者を1番から5番の各打順で起用してきた。
しかし、オールスター明けの7月20日から3人を2、3、4番に固定して動かさなかった。
これが「点の取れる打線」につながった。
開幕からオールスター前までと、オールスター明けから昨日までの3選手の成績を見てみよう。打点/試合は1試合当たりの打点。
真中監督は当初、山田哲人を1番に起用することが多かった。足を活かしたかったのだろう。そして川端を3番、畠山を4、5番で使っていた。
しかし山田は1番で16本塁打を打ち38打点も挙げた。3番の川端よりもはるかに打点が多かった。
このことを考慮したのか、7月20日から川端を2番、山田を3番、畠山を4番に固定した。
川端は2番に固定されてから打率が急上昇。首位打者に躍り出た。犠打は2つしか記録していない。積極的に打っていく攻撃型の2番打者だ。
3番に座った山田は打率も急上昇したうえに、1試合当たりの打点が.841と激増した。真中監督の判断は見事に的中したのだ。
さらに、これまでも1試合当たりの打点が.747と勝負強いところを見せていた畠山は、この数字が.836とさらに上昇。前の打者がどんどん出塁するから当然だが、畠山は打点を荒稼ぎした。
川端は首位打者、山田哲人は本塁打、盗塁、畠山は打点王が濃厚だ。
打撃の主要タイトルはヤクルトが独占しそうだ。打順の組み換えによって3人の打者が見事に活きたのだ。
こうしてみると投打の主要なポイントに選手がはまり、ヤクルトは栄冠を手にしたことがわかる。
真中満監督の手腕は評価できるのではないか。