米国式と日本式の考え方のバランスの悪さ――「ちぐはぐな」野球でCS逃したカープ【小宮山悟の眼】
セリーグは14年ぶりにヤクルトが制した。今季黒田が復帰し、優勝候補といわれたカープはなぜ浮上できなかったのだろうか?
2015/10/08
「負け試合を作る」という意図
史上稀に見る大混戦だったセリーグでは、10月2日にヤクルトが14年ぶりの優勝を果たした。そのセリーグで、私の開幕前の予想順位を大きく裏切ったチームと言えば広島だろう。
巨人とのマッチレースを期待していたが、7日中日に敗れ4位。クライマックスシリーズ進出を逃した。
広島が不振だった原因は何か。その理由を一言でいえば、「ちぐはぐな野球」をしてしまったからだろう。
投手陣が抑えても打線の援護がない。
反対に、打線が活発だと、投手陣がそれ以上に打ち込まれてしまう。そんな試合が続いた。その結果、チーム打率やチーム防御率はそれほど悪くないのに、順位は下位から抜け出せない状態が続いてしまったわけだ。
「ちぐはぐな野球」が続いたことで、ファンの間ではベンチワークに批判が集まったようだが、ある意味では、それも仕方ない面もあったと思う。個別の采配について云々するわけではない。
ただ、明確なチームとしての方針が示されたようには見えなかったことだけは確かだ。
たとえば、先発ローテーションの一角を担うエース級の投手が登板した試合では、ベンチにはその投手に試合のすべてを委ねるくらいの覚悟が求められる。
そういう試合でベンチの主な仕事は、どこまで投手交代を我慢できるか。
3回とか4回で4失点してしまっても、簡単に交代させてはいけない場面もあるのだ。その投手が9回まで完投して、結果2-4で負けたとしても、先発投手としては仕事をしたと評価されることになる。
しかし、投手交代をして、中継ぎ投手を投入した末に2-4の結果になったら、先発投手がKOされたという事実はもちろん、打線の援護がなかったことまでフューチャーされてしまうのだ。
よく、「負け試合を作る」という表現をするが、プロ野球の戦いは、トーナメント戦ではなく、長い期間にわたるリーグ戦なので、そういう采配はあってしかるべきだと思う。
具体的な名前を挙げれば、広島のエース前田健太なら、どんなに打ち込まれる展開になろうとも、7回か8回までは投げ抜く能力がある。
試合前は「エースに任せる」と思ってマウンドに送り出すのだから、リードされた展開になったからといって簡単には交代させてはいけないのだ。
そういうベンチの覚悟とか我慢する姿勢が、誰の目にも明らかなほどはっきりしているチームは強い。逆に、そこにブレがあり、「エッ!?」と思うような事態が続くと、ダッグアウトの中がクエスチョンマークだらけになり、チームのムードなど盛り上がっては来ないのだ。
残念ながら広島のベンチにはそういう姿勢を感じられなかった。