米国式と日本式の考え方のバランスの悪さ――「ちぐはぐな」野球でCS逃したカープ【小宮山悟の眼】
セリーグは14年ぶりにヤクルトが制した。今季黒田が復帰し、優勝候補といわれたカープはなぜ浮上できなかったのだろうか?
2015/10/08
QSを達成するよりも大事なこと
リーグ随一だと評価していた先発投手陣も、期待ほどのパフォーマンスを発揮してはくれなかった。数字だけを見れば十分に合格点を与えられるが、内容的には物足りなさを感じてしまう。
これはあくまでも私の想像だが、考え方が少しアメリカナイズされすぎてはいないだろうか。
確かに、米国球界で主流となり、日本球界にも浸透してきた「6回3失点のクオリティスタートが先発投手としての合格点ライン」という考え方も大切だ。ただ、どういう形で失点するかという内容も、試合の行方を左右する重要な要素だ。
本来ならば、目の前の1イニングを抑えること、1つのアウトを奪うことに集中し、その積み重ねで試合を作っていくべきなのに、6回、7回まで投げ切ることに意識がいってしまうあまりに、序盤の不用意な1球を長打され失点するケースが多かったように思う。
初回に3失点して、その後6回まで0点に抑えたとしても、先発投手が本当の意味で仕事をしたとは言えない。
特に、今年の広島のように、それほど打線が強力でないチームだと、相手ペースで試合が進む中、展開を引っ繰り返すことは難しいだろう。
攻撃陣にそんな底力を求めるのは酷というものだ。すべての試合をカバーして、統計を取ったわけではないが、今年の広島はそういう展開の試合が多かったように見えた。
決して、米国式の考え方がいけないと言っているのではない。
シーズンを通した投球回数。クオリティスタートの数。そういうマクロな視点で選手を評価して、チームを作っていくのも一つの方法だ。
ただ、広島というのは、現在のプロ野球界の中でも、どちらかといえば、そういう指標から最も離れた視点でチーム作りをしている球団のひとつ。
これまでの日本式というべきか、もっとミクロな視点でシーズンの戦いを進めてきたチームのはずだ。
先ほど指摘したベンチワークと同様に、そこにチーム全体としての明確な指針を感じられなかった。先発投手陣にも、米国式と日本式の考え方のバランスの悪さを感じずにはいられなかった。
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小宮山悟(こみやま・さとる)
1965年、千葉県生まれ。早稲田大学を経て、89年ドラフト1位でロッテ・オリオンズ(現千葉ロッテマリーンズ)へ入団。精度の高い制球力を武器に1年目から先発ローテーション入りを果たすと、以降、千葉ロッテのエースとして活躍した。00年、横浜ベイスターズ(現横浜DeNAベイスターズ)へ移籍。02年はボビー・バレンタイン監督率いるニューヨーク・メッツでプレーした。04年に古巣・千葉ロッテへ復帰、09年に現役を引退した。現在は、野球解説者、野球評論家、Jリーグの理事も務める。