違和感を覚えた、山本昌の引退登板――ファンとの別れの形に多様性を
球界のレジェンド・山本昌の現役引退登板は、広島のクライマックスシリーズ進出を懸けた一戦だった。「引退試合」を公式戦で行う必要があるのか。MLBのような1日契約という方法もあるのではないだろうか?
2015/10/11
引退試合でホームランを打ち、涙した村田
シーズン中に行われる引退試合で投手が「主役」となり、打者1人と対峙する場合、日本球界には「空振り三振で送り出す」という“お約束”があると言われている。
たとえば、2005年8月9日。現役引退を表明していた横浜ベイスターズの大魔人・佐々木主浩は、読売ジャイアンツ戦で盟友・清原和博に打順が回ってきた二回無死一塁の場面で登板している。
甘いストレートにまったく手を出さなかった清原は4球目、投げた瞬間にボールとわかる128kmのフォークボールに空振り三振に倒れる。号泣しながらのスイングは、真剣勝負にはほど遠いものだった。
2007年10月6日。広島市民球場で行われた横浜とのシーズン最終戦で、10点のリードで迎えた九回二死無走者から、広島一筋18年の野球人生を終える佐々岡真司がマウンドに立った。
打席に立ったのは村田修一。カウント3‐1とボールが先行した5球目。見逃せばボールになる真ん中高目の137kmのストレートを、村田は体勢を崩しながらフルスイングする。
四球にしてはまずいという思いと、試合前に広島側から「気持ちよくフルスイングで送り出してほしい」と要望されていたことが交錯したのか。バットの芯に“衝突”した打球は、レフトスタンドに弾んだ。
中日のタイロン・ウッズ、巨人の高橋由伸と激しいホームラン王争いを演じていた村田は、佐々岡から放った36号で一歩抜け出して初のタイトルを獲得する。
「申し訳ありません」
試合後に行われた引退セレモニーで泣きながら佐々岡に謝った村田は、さらにこんな言葉を残している。
「ホームランを打ってこんなに辛いのは、野球人生で初めてです」
清原が、そして村田が流した涙にこそ、公式戦で行われる引退試合における難しさが凝縮されているのではないだろうか。公式戦はあくまで真剣勝負を見せる舞台。そのために日々の練習を積み、ファンにお金を払ってスタジアムへ足を運んでもらう。