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札幌ドーム最終年にユニ変更。球団のリ・ブランディングから伝わるストーリー【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#165】

1月21日ファイターズが新ユニフォームと新しいプライマリー・ロゴを発表した。新ユニフォームへの反応は様々だが、このタイミングで変更した狙いはどこにあるのだろうか。

2022/01/23

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Getty Images、北海道日本ハムファイターズ



球団主導でデザインは決定

 写真やデザイン画に目を凝らすうち「昔の西武?」の違和感はだいぶ薄らいできた。まぁ、当たり前の話だが、新ユニには最初、違和感がつきものだ。1990年代の懐かしいピンストライプのユニも最初は「どう見ても社会人野球」「ビジターは阪神のパクリ?」なんて言われたものだ。こういうものは見慣れたら徐々にしっくり来るんだと思う。

 デザインの評価が聞きたくて友人のデザイナー、水尾旅人さんに連絡を取った。水尾さんはビームスの腕利きデザイナーで、野球ユニフォームはヤクルトスワローズを手掛けたことがある。この手の話は水尾さんか綱島理友さんに尋ねると(僕のなかでは)相場が決まっている。水尾さんは好感を持ったそうだ。「僕は好きです。ちゃんとアイデンティティーが感じられますね。たぶん新庄ビッグボスが着てたのは彼用に首のVを深くしたモデルかと。ちゃんとマーチャンダイズ考えられてますね。グッズに落とし込みやすい」(水尾旅人さんコメント)
 水尾さんはパッと見てわかることが大事だという。帽子の角い(そしてわかりやすい)「F」のマーク。胸の角いチームロゴ。角い背番号フォント。確かに商品展開してもフォントひとつでファイターズだと認識してもらいやすい。
 
 しかし、GAORA発表会見を見ていて2つ疑問点も残った。最大のものは他ならぬ新庄ビッグボスの口から発せられたものだ。「まぁ、正直言いますと自分のイメージした感じのユニフォームではなかったです」「1番もですね、僕ね、カクカクした1番が好きなんですよね。ちょっとそれは、来年変えたいなっていう。新しいユニフォームになってすいませんけど、僕にもちょっとこだわりがあるんで」(新庄監督コメント)
 
 これは何だろうか?
 
※僕の感覚では新ユニのフォントは角いのだが、新庄ビッグボスの「カクカクした」は別のニュアンスなのだろう。
 
 僕らファンはてっきり(監督就任会見の公約がきっかけとなって)新庄ビッグボスの美学やこだわりを反映した新ユニがお披露目されたのだ、と思っていた。新庄流の「ユニフォームをカッコよくしたい」が発端だろうと。まぁ、大人の事情を考えれば、11月からじゃ急ぎの作業になってバタバタだから、時系列的には昨夏か秋、監督打診と並行してデザイン選定に入ってたのじゃないかなぁと。
 
 そうしたらそうじゃなかった。ビッグボスのセンスじゃなかった。球団主導だ。先にユニフォーム変更があって、後から新庄ビッグボスが決まったらしい。球団公式アカウントも「北海道日本ハムファイターズはブランドをリニューアルし、新しいプライマリーロゴの下で活動していくことになりました」とツイートしている。
 
 どうやらビッグボス発ではなく、球団のリ・ブランディングだ。
 
 となると次の疑問が生じる。来年、ファイターズは北広島へ移転するのだ。なぜ今年、デザイン変更する? 「新球場で新ユニフォーム」がすんなりしてるじゃないか。フツーはそうするだろう。なぜ1年前倒しで、札幌ドーム最後の年に新ユニを打ち出す?
 
 コロナ禍でお金が要るのかなぁ。(いやらしい話)ユニフォーム変更は確実に客単価を上げる。皆、新しいユニを着て球場に行きたくなる。2代目ユニのときはキャップまでホーム用ビジター用をつくり、皆に2種類買ってもらった(これは他球団では例がない)。
 
 が、客単価は(現実面ではどうあれ)理由として弱い気がした。もっと幹の太い話じゃないか。

球団史のタテ糸を通す

 ここから先は僕の当てずっぽうなのだが、ストーリーの問題じゃないかと思うのだ。ヒルマン監督からこっち札幌ドームで奮闘してきたファイターズと、新球場&新ユニの北広島ファイターズ。このストーリーが断絶したら困ると考えた人がいるんじゃないか。2023年、すべてを一気に変えたら別のチームのようになってしまう??
 
※上沢直之の新ユニに関する印象はその点をとらえている。「本当に、新しいチームというか、今まで在籍していたファイターズのユニフォームとはかなり変わったユニフォームだと思うので、新しいチームに入団したような気持ちでいますし、このユニフォームがこれから強いファイターズを築いていくんだなと思っています」。
 
「新しいチーム」に見えすぎるのもそれはそれで問題だ。それでなくとも昨年、球団の顔というべき何人かの選手が抜けてしまった。
 
 ストーリーをつなげようと考える。球団史のタテ糸を通そうと考える。新ユニは新球場の2023年ではなく、札幌ラストイヤーのほうがいい。「北海道日本ハム」のスター中のスター、新庄剛志を呼び戻そう。コーチ陣は全員、ファイターズOBで固めよう。これまでファイターズは監督もコーチもOBにこだわらない人事を貫いてきたが、今回は「ファイターズは連続するストーリーだ」とファンのひとりひとりに感じてもらえるようにしよう。
 
 つまり、ファイターズがファイターズであることの根幹に、今回のリニューアルは触れていると思うのだ。僕はポジティブに考えている。たぶん新ユニは人気が出るだろう。

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