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五十幡亮汰の抜擢と「ガラポン打線」。新庄ビッグボスの若い力を引き出すアプローチ【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#167】

新庄ビックボスの練習方法、演出、そして試合での選手起用、采配とすべてに注目が集まっている。とりわけ若手選手のポテンシャルをどう引き出すか。そこに新庄ビックボスのユニークなアイデアが詰まっている。

2022/02/19

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産経新聞社



次のスターを育てる

 2月中旬、ファイターズは練習試合を積極的に組んでいる。「新庄ビッグボス」の報道はあい変らず圧倒的で、しかもそのほぼすべてが好意的なトーンに貫かれている。僕は個人的に選手のポジションを試合のたびにいじるのはどうかなと思っている。慣れない守備でケガされるのが怖いからだ。この時期のケガは下手すれば選手の1シーズンに影響する。不可抗力でケガするのは仕方ないが、なるべくならベストの状態で選手らにチャレンジをしてほしいと思う。
 
 ここまで新庄監督の抜擢が目立つのは2年目の五十幡亮汰だ。「マジピノ」(ピノはファミスタに登場した超俊足選手)というアダ名を与える等、あぁ、監督は五十幡をスターに育てたいんだなぁというのが伝わってくる。阪神との練習試合では「4番ショート」で起用して、僕はケガしないでくれとハラハラのし通しだった。が、案外上手にこなしてたんだよなぁ。
 
 プロ野球の監督論に「自分の分身をつくろうとする」理論がある。現役時代、大エースだった監督さんは何よりチームの柱になる投手をつくろうとし、主力打者だった監督さんは4番づくりにこだわる。名捕手として鳴らした監督さんはグラウンド上に第2の監督を置こうとする。その伝で言えば、新庄監督は真っ先に「華のあるセンター」をつくろうとするのじゃないか。
 
 「分身論」はまぁ、そんな気もするし考え過ぎな気もするというような、ビミョーな説なのだが、五十幡の売り出しにかかってる監督の姿を見ると、案外当たってるかもなぁと思えてくる。ルーキーイヤーのようなケガに見舞われなければ、五十幡の足は間違いなくパの評判をさらうだろう。その俊足を生かした守備はかつての新庄剛志に匹敵するかもしれない。ファイターズの外野は西川遥輝、大田泰示の2枚を失い、スターが必要だ。まぁ、淺間大基&五十幡亮汰のメドが立ったから自由契約にしたのかもしれないが。
 
 もちろん「分身論」が示唆するように五十幡が「次の新庄」になってくれれば最高だ。ショーマンシップで見劣りがするかわり、爆発的な走力がある。阪神戦、巨人戦で4番に据えたのは注目を集めたいからだろう。フツーに使っていては「2年目の俊足外野手」でしかない。地味だ。メディアが食いついてくれない。とにかくスターに育てたいのだ。その印象が際立っている。
 
 で、「分身論」のことを考えていて、阪神時代の野村克也監督が春先、新庄に投手をやらせたのを思い出した。サードに捕手の清水を起用したり、外野に内野手の中島、野村、水野を起用したり、逆に内野に五十幡を起用したりするのは、あのとき投手起用された新庄剛志の「分身」なのかもしれない。ノムさんは確か「投手心理を考えさせる」というようなテーマを掲げていたはずだ。「投手の立場から野球を見る機会」が打者新庄にどういう効果をもたらしたかわからないのだが、別ポジションを経験するメリットはもしかしたらあるのかもしれない。いや、あくまでケガがなければの話ではあるけれど。

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