守備指標「UZR」は万能ではない。データではわからない“一歩目の速さ”と“グラブさばき”【アンチデータベースボール】
2022/02/21
産経新聞社
テクノロジーが発達し、日々データ化が進む現代野球。一方で、人間がプレーしているからこそ、データだけではわからないプレーがあることも確かだ。データを超えた感動やドラマ、プレーのクオリティは、野球の醍醐味として外せないものである。
ここでは、SNSで大人気の野球著述家ゴジキ氏(@godziki_55)が綴る、忘れかけている何かを思い出させてくれる一作『アンチデータベースボール データ至上主義を超えた未来の野球論』(2月22日発売)から本編の一部を公開する。
データではわからない面白さや魅力はどこから来ているのか? データ至上主義のなかで対応策はあるのか? 感動やドラマ性とデータはトレードオフなのか?…などなど、尽きない疑問への「考えるヒント」が見つかるはずだ。
UZRでは測れない守備力、データではわからない一歩目の速さ
セイバーメトリクスの普及により、現在、守備評価の指標として代表格となっているのがUZRである。
野球のデータ分析を行う株式会社デルタは、以下のように解説している。
『UZR(Ultimate Zone Rating)とは同じ守備機会を同じ守備位置の平均的な野手が守る場合に比べてどれだけ失点を防いだかを表す守備の評価指標である。その守備位置の平均的な守備者のUZRはゼロとなり、優秀な守備者は+10や+20といった数値になる。
打球の処理により奪ったアウトの実績を得点(防いだ失点)に換算して守備における野手の貢献を評価するのがUZRの基本的な考え方である。ただし守備位置周辺にどれだけ打球が飛んでくるかは偶然に大きく左右されるため、単に奪ったアウトを数えるだけでは適切な守備の評価にならない。打撃の評価で打席数を揃えて比較するように、守備についても機会を揃えて比較を行う必要がある。そこでUZRの計算では打球ひとつひとつについてグラウンド上のどこのゾーンに飛んだどのような打球かを記録する作業が行われる(ゴロ・フライ・ライナー等の種類、捕球位置までの到達時間など)。これに基づいて、打球の類型ごとに平均的にどれだけアウトの見込みがあるかが計算され、守備者はそのような「平均的な見込み」との対比で評価される。これによりたまたま飛んできた打球が多かった守備者が高く評価されることを防ぎ、公平な比較を可能としている。
打球処理の評価に加え、内野手であれば併殺処理の評価、外野手であれば送球による刺殺や走者の進塁を抑止した評価などが組み入れられ最終的なUZRの値となる。また、出場イニングが多いほど数字(絶対値)が大きくなるため、出場イニング数が異なる選手同士を比較するには1000イニングあたりの数字に換算したUZR1000や1200イニングあたりの数字に換算したUZR1200が有用である』