守備指標「UZR」は万能ではない。データではわからない“一歩目の速さ”と“グラブさばき”【アンチデータベースボール】
2022/02/21
産経新聞社
しかし、このUZRも安定材料ではない。一つの参考程度に見る分には有益なデータではあるが、神格化することはまた別である。基本的には相対評価のUZRだが、データで可視化されすぎたことにより、守備における「本当のうまさ」の本質から離れている部分もある。この指標には、例えば一塁手のワンバン処理能力までは考慮されていない。また、この指標でマイナスの数値となっていても、ユーティリティプレイヤーとして利便性のある選手はいるが、評価されづらい部分があるだろう。
菊池涼介や坂本勇人はこれまで驚異的なUZRの数値を叩き出していた。しかし30歳を超えて、UZRは以前よりも下降している。脚力も落ちてきているので、ピーク時に比べれば守備範囲も狭まる。数値が下降傾向なのは仕方がない。それでも両選手は2020年にキャリア最少の失策数を記録した(菊池:0・坂本:4)。さらに菊池のシーズン守備率10割・失策数0に関しては、二塁手としては史上初の快挙だった。全盛期ほどの守備範囲はないものの、熟練された守備力は30歳を超えても発揮され、守備範囲は多少狭まったとしても、グラブさばきといった捕球技術や打球判断能力の優れた選手に変わりないことがわかる。
このようにデータだけではその選手の能力を測れない部分も出てくる。例えば打球が飛んできた際の一歩目の反応の速さだ。守備では重要な瞬発力であり各選手によって当然異なるが、現状はデータには反映されていない。
かつて巨人に在籍し、現在DeNAでプレーする田中俊太と、吉川尚輝(巨人)は、まさにデータだけではわからない部分があった。……(続きは書籍で)
書籍情報
2月22日発売!
『アンチデータベースボール データ至上主義を超えた未来の野球論』
(著者:ゴジキ(@godziki_55)著/四六判/200頁/1600円+税)
[目次】
第1章 打撃・打順論
第2章 投手・継投論
第3章 守備・走塁論
第4章 采配・戦略・マネジメント論
第5章 「感性」「感覚」「直感」の重要さがわかる野球論
データにプレーを支配されるな! セイバーメトリクスの普及によって一層進むシステム化。それでも勝利の糸口は、別の世界にある! SNSで大人気の野球著述家が言語化 データ野球だけでは絶対に勝てない理由
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【著者紹介】ゴジキ(@godziki_55)
プロ野球選手にもフォローされるTwitterで話題の野球著述家。 2021年3月に『巨人軍解体新書』(光文社新書)で、鮮烈なデビューを飾る。さらに、8月には『東京五輪2020 「侍ジャパン」で振り返る奇跡の大会』(インプレスICE新書)、12月には『坂本勇人論』(インプレスICE新書)を出版した。自身の連載である「ゴジキの巨人軍解体新書」をはじめとした「REAL SPORTS」「THE DIGEST(Slugger)」 「本がすき。」「文春野球」等で、巨人や国際大会、高校野球の内容を中心に100本以上のコラムを執筆している。週刊プレイボーイやスポーツ報知などメディア取材多数。Yahoo!ニュース公式コメンテーターも担当。本書が4作目となる。