【2022中日・戦力分析】若手外野手を育てられるかが上位進出のポイント
2022/03/03
DELTA・竹下弘道
2.各ポジションの「得失点差への寄与」は?
中日はどのように得失点差を改善すればよいだろうか。これを考えるため、各ポジションの状況を掘り下げて見ていこう。昨季の得失点差をポジション別の寄与に分解することで、チームの強みと弱みがどこにあったのかを確認する。
まずは野手を見ていこう。野手は打撃で得点を増やすか、守備で失点を減らすことにより得失点差の改善に関与できる。ここでは打撃はwRAA、守備はUZRという指標を用いて、各ポジションが得失点差に何点分の寄与をもたらしたかを計算した(図2)[1][2]。
中日は弱点を多く抱える構成となっている。レギュラー不在の二塁手と両翼、高橋周平が不調だった三塁手に加えて、意外かもしれないが大島洋平の中堅手も弱点となった。大島は36歳と中堅手としては異例の高齢だ。かつての名手も近年は加齢で守備力を落としており、中堅手の寄与は他チームに後れを取りがちとなっている。
一方、野手で唯一の強みとなったのが捕手だ。ここは木下拓哉が攻守両面でトップレベルの成績を残した。また、強みとまではいかないが、ダヤン・ビシエドの一塁手と京田陽太の遊撃手もプラスを計上している。京田は打撃で小さいマイナスを計上しているが、守備力はトップレベルなのでトータルでは優れた遊撃手だ。起用の是非が論じられることも多いが、安易に外すべきではないだろう。
チーム全体では打撃によるマイナスが非常に大きい。この数値は打者不利のバンテリンドームの影響も考慮されているため、本拠地の影響では説明できないほど得点力の低迷が深刻だったことを意味する。中日の歴史において、球場の影響を加味した打撃のマイナスがこれだけ大きかったシーズンは過去にない。
次に投手を見てみよう。ここでは先発と救援に分けて得失点差への寄与を確認する。投手は投球で失点を減らすことで寄与をもたらせる[3]。FIPという指標を使い、「先発と救援がそれぞれ得失点差に何点のプラス(マイナス)をもたらしたか」を計算した(図3)。
バンテリンドームは投手成績を押し上げる特性があるが、それを差し引いても投手陣は優秀だったと言える。特に救援投手は明確な強みとなった。クローザーのライデル・マルティネスの働きに加えて、マイナスを出さない選手層の厚さによりプラスを稼いでいる。
一方、先発はプラスとなったもののその幅は小さい。内訳を見ると、柳裕也・小笠原慎之介・大野雄大・福谷浩司の上位ローテでプラスを大きく稼いだが、選手層が薄いために5番手以降のマイナスが大きくなっている。ローテーションの谷間に投げる先発が足りなかったようだ。