変わりつつある「4番打者」の役割。長距離打者の適正打順とは【アンチデータベースボール】
2022/03/24
テクノロジーが発達し、日々データ化が進む現代野球。一方で、人間がプレーしているからこそ、データだけではわからないプレーがあることも確かだ。データを超えた感動やドラマ、プレーのクオリティは、野球の醍醐味として外せないものである。
ここでは、SNSで大人気の野球著述家ゴジキ氏(@godziki_55)が綴る、忘れかけている何かを思い出させてくれる一作『アンチデータベースボール データ至上主義を超えた未来の野球論』(2月22日発売)から本編の一部を公開する。
データではわからない面白さや魅力はどこから来ているのか? データ至上主義のなかで対応策はあるのか? 感動やドラマ性とデータはトレードオフなのか?…などなど、尽きない疑問への「考えるヒント」が見つかるはずだ。
重要なバランス感覚
「4番打者」はチームの顔であり、最高の打者が座る場所とされてきた。伝統的に見てもまさにそうだ。しかし、その考え方は時代やトレンド、戦略の変化とともに、覆されつつある。では、4番打者にはどういう選手が相応しいのだろうか。
まず、4番打者がチームのなかで、従来のイメージのように、最強というわけでもなくなってきた理由として、全体的に打球を飛ばす選手が増えてきたことがあるだろう。
2010年代中盤からフライボール革命という考え方が出てきてトレーニングの知識や器具も年々進歩し、体格の比較的大きくない選手からもホームランが出るようになった。
長打力と走力などの両立が可能になってきたとも言える。
走力があってコンタクト力も高い打者は打順を上げたいので、2番や3番に置く発想にもなっていく。具体的には、東京五輪代表監督を務めた稲葉篤紀氏がコメントしていた「スピード&パワー」を存分に発揮できる、走攻守の三拍子が揃ったバランスのいい選手である。大谷翔平や鈴木誠也、柳田悠岐、坂本勇人、山田哲人、吉田正尚が挙げられる。
打線には長距離ヒッターと、それに偏りすぎず多くの得点パターンを産むための「バランサー」となるコンタクトヒッターが必要だとされる。しかし、4番打者においてはこうした打線全体のバランスを一人で生み出さなければならないと私は考える。
つまりホームランを含めた長打力があるだけの4番は現代野球であれば、良くても5番であり、本来なら6番や7番にいるべき選手である。むしろ得点の効率が下がることが多々ある。
かつてのラミレスやバレンティンのように、長打力がありホームランを打ちつつ、要所の場面ではタイムリーが打てる。4番に座る選手がこのバランス感覚を持っているかどうかで、そのチームの得点能力が決まると言ってもいい。