機動力野球を掲げるチームはなぜ勝てないのか。WBCが生んだ“誤解”が原因?【アンチデータベースボール】
2022/03/14
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テクノロジーが発達し、日々データ化が進む現代野球。一方で、人間がプレーしているからこそ、データだけではわからないプレーがあることも確かだ。データを超えた感動やドラマ、プレーのクオリティは、野球の醍醐味として外せないものである。
ここでは、SNSで大人気の野球著述家ゴジキ氏(@godziki_55)が綴る、忘れかけている何かを思い出させてくれる一作『アンチデータベースボール データ至上主義を超えた未来の野球論』(2月22日発売)から本編の一部を公開する。
データではわからない面白さや魅力はどこから来ているのか? データ至上主義のなかで対応策はあるのか? 感動やドラマ性とデータはトレードオフなのか?…などなど、尽きない疑問への「考えるヒント」が見つかるはずだ。
脚だけでは勝てない
スモールベースボールの中枢でもある機動力野球は日本人好みである。
例えば2021年にDeNAの監督に就任した三浦大輔氏も当初は機動力野球を掲げていた。ルーキーながらもシーズンを通して3割を残した牧秀悟や桑原将志、タイラー・オースティンを擁する打線はリーグ2位のチーム打率を残したにもかかわらず、結果はBクラスに終わった。
機動力の象徴とも言える盗塁数は31でリーグワースト、盗塁死も27と盗塁数とほとんど変わらなかった。
広島の監督を務めた緒方孝市氏も1年目の2015年から機動力野球を全面に押し出し、その年は鈴木誠也ではなく野間峻祥を即戦力として我慢強く起用した。
しかしチームとしては確率性の低い盗塁が目立った。全体で85盗塁を記録したが盗塁死はワーストの50。前田健太、黒田博樹、クリス・ジョンソンといった12球団屈指の先発陣が揃っていたが、Bクラスに終わった。
翌年に鈴木誠也がブレイク。野手は菊池、丸、田中らを中心に3連覇がスタートする。なお3年間の盗塁数を列挙すると次のようになる。
2016年:盗塁118/盗塁死52
2017年:盗塁112/盗塁死40
2018年:盗塁95/盗塁死49
ここで紹介した両チームに共通して言えるのは、機動力はあくまでオプションや戦略の一つに過ぎないということだ。