NPB12球団のスカウトの「眼力」は? 過去5年のドラフト指名選手の成果【広尾晃の「ネタになる記録ばなし」】
ブログ「野球の記録で話したい」を運営中で『プロ野球解説者を解説する』(イーストプレス刊)の著者でもある広尾晃氏。当WEBサイトでは、MLBとNPBの記録をテーマに、週2回、野球ファンがいつもと違う視点で野球を楽しめるコラムを提供していく。今回は過去5年分の12球団ドラフト指名の通信簿だ。
2015/10/27
2010年に指名を受けた、柳田・山田・秋山が今年大記録を達成
2015年のドラフトが終わった。今年も12球団それぞれのビジョンの元、将来の戦力になることを期待して選手を指名した。
ドラフトは選手の指名が重複すれば抽選になるが、基本的には各球団のスカウト、フロントの「鑑定眼」の勝負になる。選手の素材を見極め、プロとしての適性やチームとの相性をしっかり見て、指名をする。
昨年に引き続き、過去5年間の12球団の「ドラフト獲得選手成績表」の一覧だ。
2010年から2014年までに獲得した新人選手がその後、どのように活躍しているかを、選手個々の通算成績を集計して比較したものだ。
その年のドラフト上位3人を紹介し、この年指名された選手全員の2015年オフまでの通算安打、勝利、セーブ数を集計した。
最下段に5年間の合計数を入れた。
パリーグからだ。
2010年は、今から振り返るとエポックメイキングな年だった。今年の「トリプル3」の柳田悠岐と山田哲人の二人、最多安打記録を更新した秋山翔吾のデビュー年だったのだ。
当初は斎藤佑樹と「ハンカチ世代」に注目が集まったが、今や話題の主は完全に変わった。
一方で早くも戦力外になる選手も出てきている。5年の歳月は勝者と敗者を分けるにはプロでは十分な時間なのだ。
ソフトバンクは、2010年の柳田、2011年の武田と投打の主力が出たが、以後、主力は出てきていない。12球団一選手層が厚いだけに、競争が激しい。また昨年・今年と将来性を重視した高卒選手の指名が多く、その世代が出てくるまでにはもう1、2年はかかるだろう。
日本ハムは2011年こそ菅野智之こそ、入団に至らなかったが、毎年戦力が育ってきている。大谷翔平だけではない。この表にはないが2011年4位の近藤健介、6位の上沢直之など下位からも戦力が育っているのが特徴だ。
ロッテは2011~13年、毎年、好投手が出ている。さらに内野の要の鈴木大地、正捕手田村龍弘なども登場。今年も楽天との抽選の末に、高校屈指の内野手・平沢の指名に成功。チームの若返りがさらに進んでいくだろう。
西武は秋山翔吾が安打製造機としてブレーク、森友哉も主軸になるなど打者が充実。そして先発救援で活躍する牧田和久も。さらに2012年4位の高橋朋己がクローザーとして一本立ちした。安打数、セーブ数は12球団最多だ。
オリックスは主軸打者こそいないが、後藤駿太、安達了一、2011年8位の川端崇義など、堅実な内野手、外野手が育ってきている。さらに佐藤達也、海田智行という救援投手も。
楽天は野手陣にやや見劣りもあるが、今やエースの則本昂大、クローザーの松井裕樹、塩見貴洋、美馬学など投手陣が順調に育っている。安樂智大も今年は1勝に終わったが来年以降に期待がかかる。今年のドラフトでは野手を多く指名したが、その選手が戦力に加わっていければ、チームも一気に若返るだろう。