【2022阪神・戦力分析】優勝には高橋遥人、佐藤輝明の躍進が不可欠。弱点の二塁は若手抜擢の検討を
2022/03/16
産経新聞社、DELTA・竹下弘道
5.総括
阪神の補強ポイントは投手・二塁手・両翼。他のポジションが変わらないという前提だと、優勝を狙うためにはこれらが弱点にならないことがほぼ必須条件となる。
これらに対する動きを見ると、投手には積極的な選手獲得の動きが見られた。ドラフトで鈴木、桐敷、補強でケラー、ウィルカーソンを獲得している。一方、両翼は選手獲得の動きが消極的だったが、二軍で好成績の井上、小野寺、島田が控えている。以上を踏まえると、投手と両翼では一定の底上げが見込めるのではないだろうか。
一方、二塁手には選手獲得の動きはなく、レギュラーの糸原健斗が復調できるかに大きく依存することになりそうだ。糸原も優れた選手ではあるものの、近年はマイナスを計上するシーズンが続いている。調子が上向いてこなければ、思い切って小幡などの他選手に代える運用も検討すべきではないだろうか。
ただ、これらのポジションを穴埋めするだけでは、優勝の目安である得失点差+100点への到達は困難と見られる。現状の強みポジションをさらに伸ばすか、新たに強みポジションを創出する必要がある。エース候補の髙橋、4番候補の佐藤輝と候補選手は揃っている。矢野燿大監督の花道を飾れるかどうかは、彼らに懸かるところが大きいだろう。
DELTAアナリスト・竹下弘道
[1] 寄与は「平均的な選手でそのポジションを埋める場合と比べて、得失点差に何点のプラス(マイナス)をもたらしたか」を表す。平均を基準とする理由は、得失点差が平均を基準とする数値だからだ。「全ポジションが平均的な選手で構成されたチーム」は得失点差が±0点となる。このチームに対して「各ポジションで得失点差を何点分上積みしたか」が分かれば、その合計からチームの得失点差を説明することができる。
[2] 厳密に言えば投手も打撃で得点を増やすことができるが、投球と比べて影響が小さいため、ここでは考慮しないものとした。
[3] これは、弱点を底上げする方が獲得機会・必要年俸の点でコストパフォーマンスが高いためである。「±0点のポジション」に「+20点の選手」を充てるのと、「-20点のポジション」に「±0点の選手」を充てるのは、どちらも20点の得失点差の改善が見込める。しかし、「+20点の選手」よりも「±0点の選手」の方が獲得しやすく、年俸も安く抑えられる。
[4] 野手はwRAA+UZR+守備位置補正、投手はFIPのみで計算した。野手は一軍の規定打席(443打席)あたり、投手は一軍の規定投球回(143投球回)あたりの数値としている。
[5] データは竹下弘道・DELTA算出
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2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート1~5』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』(https://1point02.jp/)も運営する。