日本ハム・万波中正が台湾で人気急上昇、その意外な理由とは。歴史的背景が生んだ「中正ブーム」
2022/03/16
北海道日本ハムファイターズ 最新ニュース
北海道日本ハムファイターズの万波中正外野手が、オープン戦で良いパフォーマンスを続けている。3月15日時点ですでにホームラン5本をマークしており、21歳にしてオープン戦本塁打王の位置につけている。順風満帆な万波だが、同じ外野手で台湾出身の王柏融の存在もあり、その名前は台湾の野球ファンにも広がっている。
台湾ファンが万波に熱くなる理由は、「中正」という名前であることが大きい。台湾の近代史において「中正」は即ち「蔣介石」のことを指している。第二次世界大戦が終わって4年後の1949年、当時の蔣介石が国民党軍を率いて台湾まで撤退した。そして、国民党は蔣介石のことを神格化するため、昔日本風の「大正通り」や「昭和通り」などをすべて「中正路」に改名した。
さらに、台湾各地でも多くの公会堂やホールなどが「中正堂」に変わって、いまも残っている。蔣介石が亡くなった1975年にも「先総統蔣公記念歌」などを作って、2000年の李登輝総統が退任するまでほとんどの音楽教科書に載せていた。
このことに由来し、今回の万波の活躍により、台湾野球ファンも思わず昔の記憶を交えて、「さすが委員長だね!」、「台湾は中正ばかりだけどまさか日本にも」などのコメントが発信された。また、あるファンは『先総統蔣公記念歌』の歌詞「人類の救世主! 世界の偉人だ!」を「日ハムの救世主! 北海道の偉人だ!」に“替え歌”していた。
しかし、台湾の野球ファンが「中正」を借りて昔のことを思い出すのは、決して過去を懐かしむためではない。むしろ、当時の洗脳教育のことを思い出し、万波の活躍にかこつけて、その過去を揶揄しているのだと思う。いま台湾の野球ファンにも、ある意味「中正ブーム」が起きているのかもしれない。
鄭仲嵐