中盤4回がポイント。計8得点、2巡目でヤクルト先発陣をつかまえたソフトバンク打線【広尾晃の「ネタになる記録ばなし」】
ブログ「野球の記録で話したい」を運営中で『プロ野球解説者を解説する』(イーストプレス刊)の著者でもある広尾晃氏。当WEBサイトでは、MLBとNPBの記録をテーマに、週2回、野球ファンがいつもと違う視点で野球を楽しめるコラムを提供していく。今回は日本シリーズを振り返る。
2015/10/30
1,2番が出塁して4番が還す形ができたソフトバンク
MVPを獲得した4番・李大浩の活躍は見逃せないが、詳細に見ていくと打線のつながりでも両者には大きな差があったことがわかる。
打順ごとの打撃成績を見ていこう。
ソフトバンク打線は、1番・2番打者が14安打、10四死球。合わせて24回も出塁した。続く柳田悠岐は徹底マークにあったがその後ろの李大浩が絶好調で見事にカバーした。
1、2番が元気だったので、李が打席に立った時に、走者がいるケースが非常に多かった。その走者を4番がしっかりとホームに還した。実に効率よく点が入った。
8番に入れた高谷、細川という捕手陣が伏兵のような活躍をしたのも大きかった。
ソフトバンクはレギュラーシーズンでは1番を固定せず、中村晃(38試合)、明石(31試合)、福田(22試合)などを起用してきた。これを踏襲し相手投手の左右や、調子の良さを見極めて福田、川島を使い分けた。柔軟な起用が功を奏したと言えよう。
キャプテンの内川が故障で欠場し、戦力ダウンも懸念されたが、ソフトバンクはシーズン中から力の接近した選手を併用してきた。首位打者を取ったこともある長谷川勇也が控えに回るほどの層の厚さがあった。
ヤクルト打線は山田哲人が第3戦で3本塁打したものの、レギュラーシーズンを勝ち抜いた強力打線は見られなかった。
大胆な打線の組み替えもすべきだったのかもしれないが、川端、山田、畠山という「タイトルホルダー」を動かすのは難しい。いずれにせよ主力選手がここまで抑えられてしまえば、ヤクルトにとっては厳しい。
救援陣は互角。ヤクルトは先発陣が誤算
投手成績を振り返ってみよう。BB9は1完投あたりの四球数となる。
もともと両軍ともに絶対的エースは不在だった。試合は作るが失点する投手も多い。中盤まで先発が試合をつくり、優秀な救援投手が試合を締めるパターンだった。
実際に数字を見ても救援投手陣は互角、あるいはヤクルトのほうが少し上だったかもしれない。
しかし先発投手の出来には大きな差があった。ヤクルトの先発投手は被安打も多いうえに四球も多い。中4日ローテーションのヤクルトに他に代わるべき投手もいなかった。
今年の交流戦は、ソフトバンクがヤクルトを2勝1敗で下している。この時のヤクルトの先発は●小川(6回7失点)、○石川(5回1/3回1失点)、●石山(4回5失点)。
真中監督がベテランの石川を先発の柱として第1戦、第5戦の先発に起用したが、ソフトバンクは2戦とも4回、2巡目に石川をとらえて合わせて5点を奪った。
こうして見ていくと、総合力でソフトバンクがヤクルトを上回っていたことがわかる。
監督が代わっても「勝利の味を知っている」ソフトバンクの強さは変わらなかったということだろう。