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【2022ヤクルト・戦力分析】本拠地を考慮すると投手力は既にNo.1。さらに投手を強化し連覇を狙う

2022/03/23

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DELTA・竹下弘道



5.総括

 ヤクルトの補強ポイントは左翼手・右翼手。連覇を確実にするためには、どちらも弱点に転落しないようにしたいところ。
 
 これらに対する動きを見ると、ドラフトで丸山を獲得して外野手層を手厚くしたことに加えて、二軍からは濱田と赤羽を送り出せるかどうか、という状況だ。両翼が穴にならないように、ひととおりの手は打たれたと言える。

 ただ、オフの動きを総合的に俯瞰すると、ヤクルトは野手の穴埋めよりも投手力を更に強化する方向に舵を切ったと言える。定跡と真逆の「強みをさらに伸ばす」方向性だが、これが功を奏するかが、優勝を目指す上でもうひとつのポイントとなりそうだ。
 
DELTAアナリスト・竹下弘道
 
[1] 貯金と得失点差の関係について補足する。前提として、「得失点差と比べて貯金を多くできるかどうか」は、チームの特性にほぼ依存しないことが過去の統計から明らかになっている。リリーフの使い方を工夫すれば、僅差勝ちを増やすことで「得失点差と比べて貯金を多くする」ことは一見できそうに思えるが、こうした離れ業は不可能であるというのがセイバーメトリクスのコンセンサスだ。昨季の阪神のように得失点差と貯金が乖離するチームは存在するが、この乖離はチームの特性ではなく、チームに制御できない部分によって生じる。過去の傾向からすると、前年の乖離がどうなっていようが、翌年のチームの貯金と得失点差はゼロ付近を中心としたバラツキを持って乖離が発生する。本稿では最頻値として予想される「貯金と得失点差が乖離しない状況」を前提に論考を進める。
[2] 寄与は「平均的な選手でそのポジションを埋める場合と比べて、得失点差に何点のプラス(マイナス)をもたらしたか」を表す。平均を基準とする理由は、得失点差が平均を基準とする数値だからだ。「全ポジションが平均的な選手で構成されたチーム」は得失点差が±0点となる。このチームに対して「各ポジションで得失点差を何点分上積みしたか」が分かれば、その合計からチームの得失点差を説明することができる。
[3] 厳密に言えば投手も打撃で得点を増やすことができるが、投球と比べて影響が小さいため、ここでは考慮しないものとした。
[4] ホークアイはプロテニスファンの間ではおなじみかもしれない。審判に対してチャレンジが行われた際に使用されるあのシステムである。今季は広島も導入を発表しており、導入の動きは今後他球団にも波及していく可能性がある。
[5] これは、弱点を底上げする方が獲得機会・必要年俸の点でコストパフォーマンスが高いためである。「±0点のポジション」に「+20点の選手」を充てるのと、「-20点のポジション」に「±0点の選手」を充てるのは、どちらも20点の得失点差の改善が見込める。しかし、「+20点の選手」よりも「±0点の選手」の方が獲得しやすく、年俸も安く抑えられる。
[6] 野手はwRAA+UZR+守備位置補正、投手はFIPのみで計算した。野手は一軍の規定打席(443打席)あたり、投手は一軍の規定投球回(143投球回)あたりの数値としている。
[7] 濱田はオープン戦で大活躍を見せ、開幕スタメンも視野に入ってきている。ただ、三振率が極めて高く、BABIPに依存するかたちで高打率を維持しているのが心配な点である。BABIPはグラウンド上に飛んだ打球が安打になる割合を示す指標で、打席数が少ないと能力から乖離した数値となる傾向が強い。濱田のBABIPは.647と一流打者でも持続不可能な水準にあり、打率は実力に対して極めて高く出ている疑いがある。三振率が現在のままだと打率は.250以下となる可能性が高いため、今後は三振を減らせるかがポイントになる。
[8] データは竹下弘道・DELTA算出
 

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竹下 弘道@RCAA_PRbloghttps://ranzankeikoku.blog.fc2.com/
古典的ボックススコアから選手とチームの通史的な分析に取り組む。
 
DELTA@Deltagraphshttp://deltagraphs.co.jp/
 2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート1~5』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』(https://1point02.jp/)も運営する。

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