「公式を使わず問題を解き、地力をつける」。試合を通じ成長を促す新庄ビッグボス采配【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#170】
驚愕の開幕シリーズの投手起用法、日替わり打線(守備)とこれまでの日本野球界の常識にとらわれない新庄ビッグボスの采配。現時点ではなかなか勝利につながっていないが、このトライ&エラーのやり方を貫くことで、チームは地力をつけていくものと期待している。
2022/04/03
産経新聞社
試行錯誤、紆余曲折の野手起用法の先にあるもの
一方、野手は1軍登録の選手をここまで全員試合に出してるんじゃないか。こちらは打線の組み替え、守備位置の変更が続き、いっこうに落ち着く気配がない。というより、新庄ビッグボスの意図は「落ち着いた戦いをさせない」ことにあるとさえ思う。試合に出るか出ないのか。何番を打つかどこを守るか。それを選手自身にもぎりぎりまで知らせない。スイッチを切らせない。緊張を強いる。
まぁ、投手ほど消耗の激しいポジションじゃないからある程度、耐久性はあろうけれど、野手だって疲れるはずだ。といって不満を言ってる場合じゃない。新監督の1stシーズン、仕事にありつけるかあぶれるかの瀬戸際だ。若手は飛躍のチャンスでもある。皆、何番でも打つし、どこだって守る気構えだろう。
僕は野手に関しては確信犯的にそうしてる気がする。職分を定めて可能性を狭めたくない。もしくは選手の潜在力を探っているように見える。背景には今のファイターズが若手主体だというチーム事情がある。どう伸びるかどう化けるかまだわからないのだ。新庄ビッグボスの目は若手に向けられている。あるいは柔軟に自分を変えることにできる中堅に。難しいのはベテランじゃないかなぁ。ビッグボスの野球にどうハマればいいか実に悩ましい。
とりあえず負けは込んでいるけれど、チームはこのトライ&エラーのやり方を貫き、ジワジワと地力をつけていこうとするだろう。外野手の刺殺プレー等、意識づけしたことが形になっている点も注目したい。物語の主題は「成長するチーム」。
ま、昨シーズン見たように打線は薄いのだ。ヌニエス、アルカンタラの両外国人が火を噴かないことにはホームラン数も増えない。ここまで投手陣はそこそこ失点を防いでいるが、打線の援護がなくて負けるケースが目につく。そんななかで選手らは打線の組み替え等に必死についていこうとしている。
こう、印象は数学の公式を使わないで問題を解こうとしてる感じなのだ。他チームは公式のところまではオートマチックだ。ハムは試行錯誤、紆余曲折を経て、一歩ずつ前へ進む。これは見識の問題でもあって「公式を使わないで問題を解く」方が地力がつくという考え方もある。
まぁ当然、勝てないのは悔しいけど、僕は今季、新庄ビッグボスのおかげで野球を考える契機をもらったと思っている。そして、ゲームのなかで選手の成長を見つめている。僕は元気に暮らしてるので大丈夫だ。知人の「へへへ、どうですかビッグボスの方は?」攻めにも耐えていこう。今に見ておれ。