「チャンスをつかめる環境を用意」戦力をだぶつかせず、選手の良さを引き出す工藤采配の真髄【小宮山悟の眼】
豊富な戦力を適材適所で活用する。簡単なようで難しい。それを就任1年目、ソフトバンクの工藤公康監督は見事に体現した。
2015/11/05
ベースボールチャンネル編集部
チャンスをものにできる環境を用意
シーズン終盤に、その工藤監督とQVCマリンフィールドで話す機会があった。
その会話から感じ取った工藤采配の真髄とは、“コミュニケーション力”。
監督自ら、すべての選手と分け隔てなく直接、気さくに会話できる機会を設けて、交流を深めていく。
具体的に言えば、その交流を土台にして、各選手の良さを引き出すことにシーズンを通して注力してきたという。
よく、優れた指揮官の条件の一つとして「多くの選手にチャンスを与える」起用法が挙げられることがある。
二軍から一軍に昇格させたのに、試合で起用しないまま二軍に送り返したのでは何の意味もない。
もしその選手が試合で結果を残せれば、一軍に定着できるかもしれない。もちろん、一軍の試合で活躍できるかどうかは選手次第だが、そういう起用法ができる指揮官は一流だというわけだ。
しかし工藤監督の場合は、「チャンスを与える」だけにとどまらない。選手がチャンスをものにできるような環境を用意するのも、指揮官の務めだと考えているらしい。
正直、ビックリした。
選手層の厚さはソフトバンクの長所の一つだが、言い換えればそれは戦力がだぶついているという意味でもある。
つまり、他球団ならレギュラークラスの実力を持った選手の何人が控えに回らなければならない。場合によってはそれが不満となって表れ、チーム内の不協和音の元になったりすることもあるが、ソフトバンクにはそんなムードは微塵も見られない。
逆に選手たちは、競争意識を持って、前向きにプレーしている。工藤監督の選手起用に対する考え方を聞いて、そういう選手たちの意識の高さにも納得させられた。