松本剛、新庄流積極野球で覚醒。チームプレーの縛りから解放され一変【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#171】
新庄ビッグボスの就任によって、チームや選手がどう変わるのか。開幕前から非常に関心が高かったが、その象徴というべき選手が期待の若手より一足早く中堅キャリアから出現した。
2022/04/16
産経新聞社提供
松本剛の活躍は変化の象徴
それは「首位打者」もたぶん同じ事情なのだと思う。松本剛の序列はチームバッティング優先だ。主としてチャンスメーク、あるいは繋ぎのバッティング。戦況を見て、送りバントとか右打ちに徹するとか、そういう小技、職人芸が要求された。守備位置も考え合わせるとスーパーサブ的な存在、ユーティリティープレーヤーだ。「控えの選手だけど、松本剛は野球を知ってるね」みたいな褒められ方をしてきた。
それはつまり、チームプレーの縛りだ。塁に出て自重し、打席に立って右打ちに徹する。「松本剛は野球を知ってるね」が逆に制約になっていた。そこに新庄流の積極野球出現だ。塁に出ても、打席に立っても以前よりずっと意欲的、積極的になっている。ワカゾーも変えつつあるけど、中堅キャリアの松本剛が変わったのだ。これはノムさんの「野村再生工場」ならぬ「新庄再生工場」ではないか。
まぁ、松本剛は特別うまくハマった例とも言えるので、現状で新庄ビッグボスの手腕を評価するわけにはいかない。「野村再生工場」ならぬ「新庄再生工場」というのも、少なくとも清宮を主力打者に成長させてやっと本格稼働だろう。球界のためにもぜひ清宮を再生させてほしい。
ただチーム内の変化の「芽」は間違いなく見て取れる。松本剛ほど顕著じゃないけれど、打者なら石井一成、投手なら吉田輝星に長足の進歩が見られる。2人とも新庄ビッグボスの要請で前田智徳、藤川球児臨時コーチに指導を受け、変化のきっかけをもらった選手だ。
僕はもちろんチームの勝利がいちばん嬉しいし、それを求めている。が、ずっと見てきた選手が新しい姿を見つけ、生まれ変わるところにも立ち会いたい。開幕から1か月、ファイターズはなかなか勝ち星には恵まれないけど、選手の変化は並大抵ではない。栗山前監督がもう1年指揮を執っていても、こんな変化は生まれていないはずだ。
松本剛はその変化の象徴に思える。まさか松本剛が新庄流の先頭を走るとは思わなかったが、どう考えてもそうなのだ。いま、「4番松本剛」の打席は見応えがある。野球は面白いね。