佐々木朗希の育成方針にも繋がる。吉井理人氏が筑波大大学院で学んだこと【インタビュー】
2022/04/20
産経新聞社
自分を客観的に見る力を養う
――実際に大学院での学びを終え、投手コーチとして現場で活用できているのはどんなことですか。
今、コーチングの中心になっているのが、ゲームの振り返りです。難しい言葉を使えば「内省」。これは、大学院でスポーツ心理学の先生に教わりました。じつは、アメリカでプレーするようになってから、日記を付けることを習慣づけていたのですが、先生によると、こうした行為が自分を客観的に見ることにつながっていたそうです。ただ書くだけでなく、「自伝」を作るような気持ちで、そのときの心情も入れながら書く。書くことによって、自分の中にもうひとりの自分を作ることができていました。
――自分で自分をコーチングしている感覚でしょうか。
その感覚に近いと思います。プロの現場では、ぼくの質問によって、相手の考えを引き出すようにしています。たとえば、先発投手であれば全員ではないですが、登板の翌日に1対1でディスカッション。前日の登板に関する自己採点、良かった点、昨日の試合に戻れるなら何をしたいか、主にこの3点を聞きながら、考える力や気づく力を引き出しています。
――吉井さんの立ち位置としては?
できるだけ、聞き役に徹します。こっちから言いたいことがあっても、まずは選手の主張を聞いて、それがどんなに間違っていたとしても、「あ、そうなんや。そうか、そうか」と受け入れる。でも、ぼくは未熟なので、「そうか。でもな、こういう考えのほうがええんちゃうか……」と、自分で言ってしまうんです。まだ、勉強中です。