成瀬、大引、小谷野、相川、金城……2014年FA移籍選手の通信簿【広尾晃の「ネタになる記録ばなし」】
ブログ「野球の記録で話したい」を運営中で『プロ野球解説者を解説する』(イーストプレス刊)の著者でもある広尾晃氏。当WEBサイトでは、MLBとNPBの記録をテーマに、週2回、野球ファンがいつもと違う視点で野球を楽しめるコラムを提供していく。今回は2014年オフにFA移籍をした5選手についてだ。
2015/11/10
ベテラン2選手は存在感を示す
野手は4人。それぞれの2014年と2015年の成績を比較する。RCは、安打、長打、四死球、盗塁、犠打犠飛などオフェンス面のポイントを加味した総合点。リーグトップは100を超す。順位は全野手中のもの。野手の場合、セは8人、パは9人以内ならレギュラークラスと言ってよい。
大引啓次は、2014年、日本ハムでほぼレギュラーだったがFA移籍。ヤクルトでも正遊撃手としての活躍が期待されるも、左脇腹の肉離れなどもあり戦線離脱。数字を落とした。野手での順位は6位であり、遊撃手としては最多出場で、個人成績は満足のいく結果ではなかった。ただ7月には月間打率.350、勝負強いところも見せ、ヤクルトのセリーグ制覇に貢献した。
小谷野栄一は日本ハムからFAで、最終的にオリックスへ移籍した。しかし序盤は期待通りの活躍とはいえなかった。6月末には右手首を骨折し、夏場に長期離脱となった。三塁での出場は42試合、一塁は24試合にとどまった。大幅に戦力を増強したオリックスが下位に低迷した一因ともされた。ただ特に後半戦は、出場した試合で勝負強い打撃を見せた。3年契約であり、再起が求められる。
ヤクルトの相川亮二は、中村悠平の成長に伴って捕手としての出場機会が減ったためにFA移籍。2008年に続き二度目のFA移籍。巨人でも阿部が1塁にコンバートとなり、小林誠二の控え捕手という役割だった。開幕直後に肉離れで戦線離脱したものの、5月に登録されると勝負強い打撃でたびたび殊勲打を放ち、経験と打力を買われ、小林を押しのけて先発出場することも多くなった。7月末に左手首を骨折し、シーズンを終えてしまったが、わずか40試合で昨年のRCを超える数字をたたき出した。来年7月には40歳になるが、捕手のスーパーサブとして存在感は大きい。
DeNAから巨人にFA移籍した金城龍彦は、首位打者、新人王も獲得した大物打者。当初は代打だったが、故障者が相次いだため、4月9日には1番で先発出場も果たした。4月の月間打率は.302をマークしたが、次第に成績が下落し、故障もあって6月11日に登録抹消。11月5日に任意引退となり、来季から巨人三軍打撃コーチ就任が発表された。
こうして見ると昨年のFA選手で、新天地で大きく数字を伸ばした選手はいない。主力級ではなく、やや盛りを過ぎたベテラン選手が多かったこともあるが、この数字は一般論として「FA移籍の選手に過大な期待は禁物だ」ということを表しているように思われる。
今季のFA移籍選手は2016年、どんな成績を上げるだろうか。