工藤公康氏がソフトバンク投手陣に渡していた『投手マニュアル』。重要なのは「R・B・T」の三原則【インタビュー】
2022/04/29
球数を投げることで覚えられること
――一番の狙いはどこにありますか。
工藤 意識をしなくても、そこに投げられるフォームを作るのが狙いです。試合になるとランナーのケアをしたり、バッターの動きを探ったり、投げる以外のところに神経を注ぐ必要が出てきます。そのときに、自分が投げることで精一杯になっていると、周りを見る余裕が生まれてきません。アウトローに投げるとしたら、アウトローに投げるためのフォームを覚え込ませる。プロの投手でも、なかなかできる練習ではありません。
――話を聞いただけでも、きつさが想像できます。
工藤 ソフトバンクの投手にもやらせたことがありますが、だいたい20球ぐらいで息が上がってきます。大事なのはここからで、体の力が使えなくなってくると、効率のいい投げ方を見つけ出そうとします。それを続けていくうちに、力を抜く感覚や骨で投げる感覚が少しずつわかってくる投手もいます。
――昔はキャンプの時期に1日300球近く投げ込むこともあったそうですが、そういう意味もあったのでしょうか。
工藤 そうです。力一杯投げていたら、300球なんて到底投げられるわけがありません。150球を過ぎたあたりから、いかに楽をするかを考え、そこで余計な力みが抜けてくるものです。今の時代に、同じような投げ込みをするのは難しいですが、私自身は球数を投げることで覚えたことがたくさんありました。