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実力不足を痛感しながらもがく清宮。「甲子園組三銃士」に託されるチームの未来【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#173】

先日ファイターズはオリックス戦で3番清宮、4番野村、5番万波のクリンナップを組んだ。まだまだ経験の浅い「甲子園組三銃士」が成長を遂げ、1軍で結果を残せるかどうか、ここにこのチームの未来が懸かっている。

2022/05/15

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産経新聞社



今はプロで苦しみ、悩み抜く若者

 僕は今シーズンの主軸は(近藤を別とすれば)両外国人になるだろうと踏んでいた。特に実績から言って4番はヌニエスだと考えていた。それがなかなかハマらない。下位を打たせていずれレアードみたいに化けてくれたらありがたい、という感じになってきた。どうせアジャスト待ちなら三銃士を使ったほうが将来的なメリットが大きいだろう。目先の結果にこだわらず、3番清宮、4番野村、5番万波のクリンナップで行ったらどうだろう。思い出すのは栗山監督がガマン強く使い続けた若き日の中田翔だ。あのときと同じことを今、やっているんだと思う。
 
「(2回裏、2点タイムリーの打席について)昨日の打席と今日の1打席目と、散々チャンスが巡ってきて思うような結果が残せなかったので、思い切って吹っ切れて行きました、ハイ。いや、ホッとしました、ハイ」
 
 通算130勝を達成した金子に続いて、ヒーローインタビュー立った清宮のコメントだ。この「いや、ホッとしました」のとき、場内に笑いが起きた。
 
「(昨日ホームランを打った野村に「鎌ケ谷でクリンナップを組んでたときはキヨさんとアベック弾を打った。次はキヨさんが打ってくれると思うこと」と煽られた件について)いや、煽ってましたねー、あいつ」
 再び、場内爆笑。
 
「でも、今、ジェイ(野村)とマンチュー(万波)とクリンナップ打ってますけど、ホント鎌ケ谷にいたときから3人でクリンナップ打とうって話してたんで、まだ自分も含めてみんな成長途中だと思うんですけど、それでもこんな1軍の舞台でクリンナップ組ませていただいて、今、すごいいい経験をしています。絶対にこのチャンスを生かしたいと思います」
 
 僕は清宮の言葉に感じるところがあった。もう鳴り物入りでプロ野球に飛び込んできた「超高校級のスラッガー」じゃないんだ。同世代のチームメイトに刺激をもらい励まされて、何とかプロで結果残そうと悩み抜いてる若者だ。タイミングが取れない。自分のスイングができない。実力不足を痛感しながら光明を見出そうともがいている。
 
 言葉が本音だった。タテマエでごまかさない。新庄ビッグボスの「1軍に残りたいという姿勢が全く見えない。バットを出さない限り、一生結果は出ない」というゲキに触れられて「みんな…、必死…、ですけど…」と声をしぼり出したのは本当に面白かった。必死だよなぁ。必死だけどバットが出ないときもあるんだよなぁ。
 
 たとえば今川優馬と比べたら清宮はやっぱりお坊ちゃんだ。ひ弱さがある。「執念」を旗頭にするような割り切りというか覚悟がない。でも、弱さは若さだ。ファイターズの青春群像劇のなかで、いつかその弱さを乗り越えればいい。超越的な怪物打者ではないけれど、代えのきかない個性だ。
 
 僕はヒーローインタビューの姿を見て「清宮、みんなで伸びていけ」と思った。その方がずっとラクだ。まだまだだけどね。ひたむきにやるしかない。後になって振り返ったらあのときがいちばん楽しかったと思うかもしれないよ。

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