若きチームが一気に成長した王者ヤクルトとの3試合。「野球の応用問題」で経験値高める【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#174】
セ・パ交流戦がスタートした。ファイターズの開幕カードはいきなり昨年度日本一のスワローズ。経験の浅い若い選手たちが王者に対して真っ向勝負で挑んだ3試合、昨年の日本シリーズを彷彿させる内容の濃い試合になった。
2022/05/29
「幼さ」を露呈。前夜に続くサヨナラ負け―第2戦
そして第2戦、ダンスのステップは格段に激しくなる。ファイターズは二度リードを奪い、二度追いつかれる。三度目にリードを奪ったときは山崎晃太朗に逆転サヨナラ3ランを食らう。被弾したのはまたも北山だ。同じ投手の2日連続サヨナラ被弾は星野仙一以来、44年ぶりの悲劇であったという。この試合は青木宣親の適時打のようなヤクルトの「大人」な部分と、9回表清宮幸太郎のスタート遅れ(重盗でホームを狙う)のようなハムの「幼さ」が言挙げされる。
SNSでも清宮は叩かれた。ヤクルト村上と比べられ、けちょんけちょんだ。ヤクルト戦は清宮が村上と同じグラウンドに立ち、直接比較されるという意味でもありがたいのだ。清宮は彼が抱える主題から逃げられない。苦しくても逃げるな、がんばれ幸太郎。オレもけちょんけちょんに言われるの一緒につき合うよ。いつか思いを叶えて気持ちよく泣こうよ。
※若い選手の判断が遅れるのは、一般論としてはその都度考えるからだ。準備が足りないというか、準備の習慣がない。だから若い選手ほど「このシチュエーションでは、こうなったらこうする。こうならなかったらこうする」をプレーの前に頭に入れておく必要がある。先に考えておくのが「準備」だ。ベテランになればそれが習慣化して、自然に動けるようになる。頭を使わないでいると、そもそもベテランになれない。
2戦終わって、ちょっと面白かったのは僕が第1戦の途中、神宮内野席で投稿した「これ、日本シリーズですか???」というツイートが地味に伸びていたことだ。「いいね」は第2戦、ヤクルトファンからもじゃんじゃんついた。「二夜連続サヨナラ弾」だ。そんな派手なもん滅多に見られない。が、ヤクルトファンから不思議とヤングファイターズに賞賛が集まっていた。ヤクルトファンにとってもこの交流戦は十分「日本シリーズ」っぽかったのだ。去年の晩秋、野球にしびれまくって以来、久々にダンスを踊っていた。
土壇場の同点劇、北山の意地の23球―第3戦
で、第3戦はファイターズがやり返す。神宮球場は野球にしびれまくった者どもの巣窟だった。3対5、2点ビハインドの9回表、万波中正&アルカンタラの連続ホームランで追いつくんだよ。相手はここまで防御率0.00のマクガフだ。あり得ない。もうこの三日間は「日本シリーズ」なのであり得ないことばかりだ。
10回表、木澤尚文が出したヤクルトこの試合初の四球(なんて大人のチーム!)が効いた。これ、選んだの清宮なんだよ。大きいよ、この無死走者。代走の中島卓也が盗塁。もうひとつ大きかった要素は次の松本剛が送りバントを失敗して、ヒッティングに変えたことだ。ヒットを放ち、1、3塁。チャンピオンチームに重圧をかける。何とそこから4点もぎ取った。10回裏、マウンドに登場したのはもちろん北山だ。3連投。新庄ビッグボスが声をかけて送り出す。
「こんだけのファンのみんなが遅くまで残ってくれて、見ているから、越えていけ!」
さぁ、北山は全23球、ストレートだよ。気持ちだよ。走者を出して1失点したけれど、ストレートを貫き通した。野球のいちばん根幹、闘争心。北山すごかった。ファイターズはこの3日間で強くなった。みんな、信じてこの道を行こう。ヤクルト本当にありがとう。できることなら秋にまた試合したいよ。