稀代の長距離砲・中村剛也と、大打者への入口に立った山田哲人。個性が違う2015年の本塁打王【広尾晃の「ネタになる記録ばなし」】
ブログ「野球の記録で話したい」を運営中で『プロ野球解説者を解説する』(イーストプレス刊)の著者でもある広尾晃氏。当WEBサイトでは、MLBとNPBの記録をテーマに、週2回、野球ファンがいつもと違う視点で野球を楽しめるコラムを提供していく。今回は2015年の本塁打王についてだ。
2015/11/24
ベースボールチャンネル編集部
年間コンスタントに打った中村、固め打ちの山田
今年のNPBの本塁打王はパが西武の中村剛也、セがヤクルトの山田哲人。対照的な2人が栄冠に輝いた。この二人をいろいろな観点から比較してみよう。
ともに大阪府の私立高校を卒業した右打者という共通点はあるが、他の要素はことごとく異なっている。
中村は14年目のベテラン、山田は5年目の新鋭。体格も当然違う。
2015年を見ると、本塁打率(本塁打数÷打数)は中村が上で、リーグ総数に占める率では山田が上。これはパリーグのほうが本塁打総数が多く、中村のライバルが多かったことを意味する。
敬遠はともに少ない。
かつては1974年の王貞治のように45個もの敬遠を記録した本塁打王もいた中、最近は敬遠そのものが少なくなった。特に山田の場合、後ろに4番で打点王の畠山和洋が控えているため敬遠されることがほとんどなかった。
本塁打方向は、右打者だからともに左方向が圧倒的に多い。
しかし中村は逆方向への流し打ちの本塁打が5本もある。確かな技術も証明している。
ちなみに今年、グランドスラムが4本。これは1950年、名古屋(現中日)の西沢道夫の5本に次ぐ記録。中村は通算満塁本塁打も16本となり歴代1位になった。
一方の山田は、シーズン前半まで1番を打っていたためソロ本塁打が多い。
本塁打の打点で本塁打数を割った平均打点は、中村が1.89、山田が1.61と大きな差がついている。
月間の本塁打は、中村がコンスタントに打っていたのに対し、山田は7月、8月に19本。この固め打ちがチーム躍進の原動力となった。
通算成績では圧倒的に中村剛也が上だ。
中村は通算本塁打率は7.58%、今年は7.10%だから、彼の実力からすれば本塁打王は取ったものの、上出来の年ではなかった。
若い山田哲人は、まさにこれからの選手だ。
中村剛也はNPB史上でも屈指の長距離打者だ。キャリアSTATSを見てみよう。赤字はリーグ1位。