二ケタ勝利は吉川のみ。パリーグの左腕先発投手が激減【広尾晃の「ネタになる記録ばなし」】
ブログ「野球の記録で話したい」を運営中で『プロ野球解説者を解説する』(イーストプレス刊)の著者でもある広尾晃氏。当WEBサイトでは、MLBとNPBの記録をテーマに、週2回、野球ファンがいつもと違う視点で野球を楽しめるコラムを提供していく。今回は左腕先発投手についてだ。
2015/11/25
ベースボールチャンネル編集部
アンバランスなパリーグの先発投手
NPBではべストナインの発表があった。あとはMVPと新人王の発表を残すのみだが、投手のデータを調べていると不思議なことに気が付いた。
セリーグは規定投球回数に達した14人のうち、右投手が8人、左投手が6人。一方のパリーグは12人のうち右投手が11人。左投手は日本ハムの吉川光夫1人だけだった。
一般社会では右利きと左利きの比率はおよそ9対1だとされている。
しかし、左利きが有利だとされる野球の世界では、左打者・左投手が多い。右対左の対比は3対1~2対1になると言われている。
そこで2015年時点での両リーグの投手の左右の別と、先発投手の左右別の成績を出して見た。
パリーグは支配下の投手217人のうち、右投手は70.5%、左投手は29.5%。しかし先発数は右投手が78.9%、左投手が21.1%。
セリーグは支配下の投手202人のうち、右投手は63.9%、左投手は36.6%。先発数は右投手が64.5%、左投手が35.5%。
確かにパのほうが右投手の比率は高いが、先発に限れば、その比率以上に右投手が起用されている。パの先発投手は、およそ8割が右なのだ。もちろん先発を期待されている左投手が各球団にいるわけだが、自身の不調やチーム事情によって先発を投げていない結果がこのような極端な数字になっているのではないか。
そのため、両リーグ先発投手の左右別勝利数5傑はこのようになる。
セリーグが左右まんべんなく二けた勝利の投手がいるのに対し、パリーグの左腕の二けた勝利は唯一規定投球回数に達した吉川だけ。5勝以上も5人しかいないのだ。
投球回数が100回を超えたのも吉川だけだ。
打者はどうだろうか。
規定打席以上の打者の左右別を見ると、セは右打ちが14人、左打ちが9人、両打ちが1人、パは右打ちが15人、左打ちが14人、両打ちが1人。
むしろ、パのほうが左打ちのレギュラー選手が多いのだ。
“天敵”とされる左投手が少ないパの規定打席以上の左打者の平均打率は.291、右打者は.261、セの左打者は.283、右打者は.273だった。
ちなみに救援投手についてみてみると、全試合数の3割(43試合)以上登板した救援投手の数はパの右投手が18人、左投手が6人。セは右投手が17人、左投手は4人と大差がない。
パの先発投手だけが大きく偏っているのだ。