二ケタ勝利は吉川のみ。パリーグの左腕先発投手が激減【広尾晃の「ネタになる記録ばなし」】
ブログ「野球の記録で話したい」を運営中で『プロ野球解説者を解説する』(イーストプレス刊)の著者でもある広尾晃氏。当WEBサイトでは、MLBとNPBの記録をテーマに、週2回、野球ファンがいつもと違う視点で野球を楽しめるコラムを提供していく。今回は左腕先発投手についてだ。
2015/11/25
ベースボールチャンネル編集部
2013年以降、左先発投手が減ったパリーグ
いつごろからパの左腕先発投手が減ったのか。
規定投球回数以上の投手の左右別の成績を5年前から追いかけた。
パは2011年は右10人、左7人、2012年は右8人、左5人と左右が拮抗していたが、2013年に1人になる。以後、3年連続で1人が続いている。セは過去5年間、大きな変動はない。
2011年パの規定投球回数以上の左投手は、ソフトバンクの和田毅、杉内俊哉、日本ハムの武田勝、西武の帆足和幸、オリックスの中山慎也、ロッテの成瀬善久。
2012年は日本ハムの吉川光夫、ソフトバンクの大隣憲司、山田大樹、日本ハムの武田勝、ロッテの成瀬善久。
このうち和田はMLBに移籍(来季から再びソフトバンク)、杉内は巨人に移籍した。ロッテの成瀬善久は、FAでヤクルトへ移籍、武田勝、帆足和幸、中山慎也、山田大樹も成績を下落させた。大隣は病気にも見舞われ長期、戦線離脱した。
パリーグは、この数年間はエース級の左投手が移籍したり、衰えたりする過渡期にあったのだ。しかし彼らの後を継ぐ若手の左腕先発投手が伸びてこなかったために、アンバランスな状態になっているのだ。
球史に残る大左腕投手だったソフトバンクの工藤公康監督は、MLBから復帰した和田毅を呼び戻した。ソフトバンクは今季90勝を挙げたが、左の勝ち星は帆足和幸の5勝だけだった。やはり左の本格派投手の必要性を感じているのだろう。
もちろん柳田や秋山、筒香といった優秀な左打者は、左投手を苦にしない。また優秀な左投手も右打者を苦にしない。
しかし先発投手の「左右」は、打線の組み換えや、代打の起用など、試合を決定づけるさまざまな「勝負のあや」を生む。用兵や作戦を複雑にし、試合の興趣を深める。
パリーグの各球団の来季の左先発投手に注目してみると、また面白い野球の見方ができるのではないだろうか。