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星秀和(元埼玉西武ライオンズ)――11.9トライアウトへ。燃え尽きるまで野球を続けたい!【中島大輔 One~この1人をクローズアップ】

ある試合の象徴的なワンシーンを切り抜き、その場面の選手の心理や想いを取り上げる連載企画。10月以降はシーズンオフということもあり、試合のワンシーンではなく1人の選手をクローズアップしていく。先週に続き、星秀和を取り上げる。いよいよ今週末に静岡県・草薙球場でトライアウトが行われる。自分を支えてくれたすべての人に感謝の気持ちを抱きつつ、いよいよ本番へ挑む。

2014/11/04

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Daisuke Nakajima



独立リーグで、自分が変わったことに気が付く

 栗山巧の近所に住んでいた星秀和は毎朝、先輩の自宅まで〝運転手〟として迎えに行き、西武が本拠地を置く所沢まで送り届けた。西武第二球場で自主トレを行う栗山とともに汗を流し、右ヒジのリハビリに明け暮れた。

 3月末、14年シーズンが開幕して以降も同じような生活が続いた。栗山を西武ドームで降ろすと、星はすぐ隣の西武第二球場に向かった。施設の使用について、二軍のマネージャーが快諾してくれていた。

 ケガなどで二軍の試合に帯同しない後輩がキャッチボールの相手をしてくれ、打撃練習をするマシンもあった。

 夜になると西武ドームの片隅で一軍の試合を観戦し、終わった後は栗山を都内の自宅まで送り届ける。リハビリをするうえで、仕事、設備、仲間、そして頼れる先輩と、最高の環境が整っていた。

 黙々とコンディションを整えた星は6月5日、遂に群馬ダイヤモンドペガサスと契約を結ぶ。BCリーグの月収は10万円から40万円と規定されていて、前年の推定年俸1000万円から大幅ダウンした。

 西武ドームでは3万人の観客が詰め掛けることもあったが、独立リーググランドチャンピオンシップ第3戦に訪れたのは1250人。会場となった前橋市民球場には選手ロッカーもないような環境だ。

 この日の試合前、グラウンドは15時すぎまで地域の町内対抗県大会が行われ、別の場所でウォーミングアップしてから16時すぎ、ようやく使用することができた。試合後は入場門で観客を見送り、グラウンド整備は自分たちで行う。

 独立リーグを取り囲むのはそんな状況だが、とにかく野球をできるうれしさが染み渡った。

「環境が違うというのはありますけど、やる野球は一緒だったので。西武の頃と比べて、そこまで変わった部分はなかったですね」

 今季のBCリーグでは44試合に出場し、打率2割9分4厘。必死にボールを追いかけながら、星は以前と違う自分に気づいた。

「西武のときは結果を出せなかったとき、『絶対、周りから言われている』って考えていました。二軍に落ちたら、『こいつ、使えない』とか言われているって。でも、いまは周りの目を気にしなくなりましたね。人がどう見ようが、自分がちゃんと野球をできていれば、全然問題ない」

 グラウンドに立ちながら、全身に充実感がみなぎっていた。同時に、「一度死んだ強さ」を手に入れた。

「プロのときは、戦力外におびえながらやるわけですよ、みんな。はっきり言って、レギュラークラス以外はそうです。でも、独立リーグにいる時点で根無し草なわけだから、その恐怖がありません」

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