乙坂智、ドミニカでは「野球の本質を見た」。4年間の成果が表れたジョンソンからの一打【2015年ブレイク選手・横浜DeNA】
横浜DeNAベイスターズの乙坂智にとって、2015年は来季につながる1年となった。入団以来、4年間練習で積み上げてきたものが成果となって表れた。
2015/12/16
1本の安打に大きな意味
「こんなに長く1軍にいたのは初めてだったので、すごくいい経験になりました。あらためて大切だと痛感したのは打席の中での集中力。いくら自分の調子が良くても1球でも打ち損じてしまったら、その打席でチャンスはなくなってしまいますからね」
印象的な大きな瞳を見開き、横浜DeNAベイスターズの乙坂智は熱心に語り続けた。
今シーズン、外野手として筒香嘉智と梶谷隆幸が固定されている状況下、DeNAでは残りひと枠をめぐる熾烈な競争があったわけだが、荒波翔、桑原将志、関根大気らの争いに割って入ったのがこの4年目の乙坂である。
昨シーズンは1軍で6試合2打席の出場に止まったが、今シーズンは52試合138打席、スタメンとしては荒波、関根に次ぐ25試合出場しており大きな飛躍を遂げた。
パンチ力のある打撃が魅力で、今シーズンは少ないチャンスの中、3本塁打を記録。とくに8月7日の阪神戦では、5回2死一、二塁の場面でメッセンジャーからスリーランをバックスクリーンに放ち、逆転勝利を呼び込んでいる。劇的な状況にあるにも関わらずクールに振る舞いダイアモンドをまわる乙坂の姿は印象深いものだった。試合後には初めてハマスタのお立ち台に上がりファンから多大なる祝福を受けている。
名を上げた殊勲の一打。乙坂に今シーズン一番印象に残った打席はやっぱりこれですか、と尋ねると意外にもかぶりを振った。
「じつは自分として一番印象に残っているのは広島のジョンソンからセンター前ヒットを打った打席なんです」
8月1日のカープ戦、この試合は乙坂が1番打者として初めてスタメン起用された一戦だった。乙坂は2回にショートへの内野安打を放つと、つづく5回の打席でジョンソンの投じた140キロ台半ばの内に来るツーシームをセンター前へきれいに弾き返した。
「あの打席では、内側からうまくバットが出たんですよ。4年間練習して積み重ねてきた“インサイドアウト”の技術が試合の中で発揮できたというのがすごくうれしかった」
傍から見れば何でもない一安打かもしれないが、本人にとってはプロ生活を鑑みても大きな意味を持つ一打だった。
「こういった打席をもっと増やしていきたい。打席の中では、とにかく自分のスイングをすることだけ考えています。相手の配球やイニング、ランナーの有無、どんな状況であっても自分のバッティングを貫いていきたい」
では熾烈なポジション争いに割って入れたことをどのように思っているのだろうか。
「正直、誰がいるとかは気にならないんです。自分は自分のプレースタイルがあるし、入団したときからベイスターズで日本一になりたいってことだけ考えているので、とにかく打って欲しいときに打てる面白い選手になりたい。とにかく今は自分を高めたいんです」