オートマティックFAという考え方も。ロッテ・今江の事例から見た日本版FA制度の問題点
選手がFA権行使をする際、宣言したあとの残留を認めない球団が複数あるのは周知の事実だ。先日選手会はNPBへの事務折衝で、この球団の方針を公表しないように申し入れた。
2015/12/21
FA権を取得したら、自動的に行使とする
「メジャー・リーグ(MLB)でFA権を取得した選手は、ほぼ100%行使するでしょう。せっかく得た権利をなぜ使わないの、というアメリカ社会では、FA権を行使するのに何も迷う要素はないし、批判も受けないからね。でも、日本に導入された際、球団フロントの中に『育ててもらった恩を仇で返す制度』という人がいたくらい、義理と人情を大切にしてきた日本の社会では馴染みにくい制度だった。だから、定着させるためには自分で宣言させる形ではダメ。FAになる要件を満たしたら、全員が権利を行使したことにすべきだと思う」
つまり、FA権を取得したら、同時に行使したことにする。オートマティックFAである。そして、NPBから該当する選手の氏名が公示され、定められた日から全12球団と一斉に交渉できるようにする。このシステムの利点は、選手が移籍したいのか残留したいのかという意思を示さなくても、獲得を希望する球団の話を聞けることだ。もちろん、要件を満たした全選手がFAになるのだから、行使した選手の残留を認めないという方針を球団側が打ち出すこともできない。
さらに、実は球団側にとってもメリットがある。
例えば、ある球団で35歳の遊撃手(A)がレギュラーだったとしよう。そこに20歳の遊撃手(B)が台頭し、現場はこのBを起用して大成させたいと考えている。だが、Aはキャプテン経験もあり、ファンからの人気も絶大で、トレードしたりすれば球団のイメージは損なわれる。加えて、何よりA本人に移籍する気がまったくない。こういう状況で、Aに代わってBを大抜擢できないのも日本の組織の特徴だろう。
だが、Aが自動的にFAになれば、球団側はBを起用するという前提でバックアップとしての条件を提示すればいい。
他球団が好条件を提示すればAは移籍を選択するだろうし、そうしたやりとりがいくつも続けば、NPBからFAアレルギーのような空気はなくなるはずだ。一定年数プレーした選手が得る権利から、一定年数プレーした選手が適正な評価を受ける機会へ。
オートマティックFAは、もちろん利点ばかりではないにしろ、日本独特のFA観を変化させていくことはできるだろう。