ライオンズ10巡目・松本直晃、異色の経歴を売りに。投手として硬式を握ってわずか9カ月でプロへ
今年のドラフトで埼玉西武ライオンズから10巡目で指名を受けた松本直晃は、職歴・投手経験歴と異色づくめの選手だ。
2015/12/12
介護職員からプロ野球選手へ
12月11日に行われた埼玉西武ライオンズの「2015ドラフト新入団選手発表会」で、25歳と遅いプロ入りを迎えたルーキーは、壇上で真っ先に田邊徳雄監督と握手を交わした。背番号18を与えられたドラフト1位の多和田真三郎をトリに、10人の新人が指名の低い順位から入場してくるシステムだったからだ。
さかのぼって約50日前のドラフト会議。独立リーグの香川オリーブガイナーズでプレーする松本直晃の名前が呼ばれたのは、指名された全88選手(育成枠は除く)のうち最後だった。
「ドラフト10巡目ですけど、いい意味で期待を裏切っていきたいと思います」
ライオンズファンを前に快活な表情で話したこの右腕投手は、指名前後からそれなりの注目を集めてきた。その際につきまとったのが、“異色”の2文字だ。
東海大学付属静岡翔洋高校時代はサードしてプレーし、環太平洋大学では主にショートやライトを守った。大学限りで野球をやめようと思っていたものの、就職活動を始めようとした頃に医療法人養和会と出会い、新設される軟式野球部にキャプテンとして招かれる。本職はショートだったが、人数の兼ね合いなどで投手としてマウンドに上がるようにもなった。
介護職員として働きながらプレーする2年間で実力を養い、四国アイランドリーグのトライアウトを経て香川から2014年に1位指名される。硬式に握り変えた右腕は最速151kmを出すまでに急成長し、1シーズン後にNPB入りを果たしたのだ。
松本のここ数年間の道程はシンデレラストーリーと言える。そうした道を歩むルーキーは、“異色”と言われることをどう思っているのだろうか。
「僕にとってはすごくいいと思っています。それだけ注目を集められるのなら、そこをどんどん売っていきたいですね」
「逆転の発想」を持つ松本は、香川でプレーした1年間で「よりピッチャーらしくなった」と振り返る。そうして身につけたのが、「気持ちのこもった、どんどん押していくピッチングスタイル」だ。
「(メンタルの強さを自覚したのは)今年ピッチャーを始めてからですね。初めてマウンドに立ってみて、思った以上に平常心でいられるなとずっと思っていたので」