2015年は強打者少。打力から総合力への評価に変わりつつある外国人野手陣【広尾晃の「ネタになる記録ばなし」】
ブログ「野球の記録で話したい」を運営中で『プロ野球解説者を解説する』(イーストプレス刊)の著者でもある広尾晃氏。当WEBサイトでは、MLBとNPBの記録をテーマに、週2回、野球ファンがいつもと違う視点で野球を楽しめるコラムを提供していく。今回はセパ外国人選手の成績をマトリックスにして分析してみた。
2015/12/14
タイトルを独占した昨年とは一変
セリーグはどうだろうか。
パ同様、抜群の働きをした打者は見当たらない。
19人の外国人選手がプレーした。昨年は本塁打王を広島のエルドレッド、首位打者をマートン、打点王をゴメスと阪神の外国人勢が活躍したが、今季はタイトルホルダーはいなかった。
規定打席に達した打者は6人いるが、本塁打は25本のロペス、打点も73のロペス、打率は.292のルナ。いずれも極めて優秀な数字だったとは言えない。
特にヤクルト、巨人、広島は規定打席に達した選手がいなかった。巨人、ヤクルトは当初予定していた外国人選手が故障や不振で活躍できなかったために、急きょ、海外や独立リーグから新しい外国人を獲得している。
マトリックスで見てみよう。
横軸が確実性を示す打率、縦軸が長打力を示す平均塁打(塁打÷安打)。
実線はリーグ平均。200打席以上の選手。
こちらも、あまり良い成績ではない。
広島のエルドレッド、シアーホルツは平均を大きく上回る長打力を発揮したが、他の外国人選手は長打でも、打率でも並の成績。
ロペスだけがかろうじて、主軸打者のポジションにいる。巧みな一塁守備でも貢献した。
中日のエルナンデスや、DeNAのバルディリスは、守備面でそこそこの貢献をしたが、他の日本人選手と比較して、優秀だったとは言えなかった。
外国人打者を獲得するときに「メジャー何本塁打」という触れ込みがよくメディアに載るが、今のNPBは単純なパワーだけでは通用しなくなっている。確実性、選球眼なども必要なのだ。さらにDH制のないセリーグでは守備力も必須になってくる。
これらを総合的に持っている選手を獲得しなければならないのだ。
そういう選手は、当然MLBでも獲得の対象になるため、なかなかNPBにはやって来ない。MLBでレギュラーを取れなかった“出世前”の選手の中から、そういう素材を発掘していく必要が出てくる。今季まで阪神にいたマット・マートンはまさにそういう選手だった。
来季も多くの新外国人打者がやってくるだろう。
彼らのうち、“当たり”の選手は何人くらいいるだろうか。