「ゆくゆくは『27番』を」ヤクルト・中村悠平が追いかけ始めた大捕手の背中【2015年ブレイク選手】
実質的には正捕手1年目ながら、東京ヤクルトスワローズのリーグ優勝に大きく貢献した今シーズンの中村悠平。セリーグを代表する捕手にまで成長した彼は今、あの偉大な先輩の背中を追いかけるためのスタートラインに立った。
2015/12/20
菊田康彦
「すべての人に認めてもらって27番を着けられるように」
昨オフ、相川は出場機会を求めてFAで巨人へ移籍。否応なしに独り立ちを迫られた中村には、自然と正捕手としての『自覚』が芽生え、シーズンに入るとそれこそ「野球漬け」の日々を送った。
そんな中村の姿に「今やこのチームは彼のチームだ」とまで言ったのは、リーグ最多タイの41セーブで優勝に大きく貢献したトニー・バーネットだ。
「オレが思うに、優秀なキャッチャーというのは試合を掌握できるキャッチャーだ。投手を操り、味方の守備も操って、試合の流れをコントロールする。それをナカムラはうまくやっている。スワローズの投手陣が好調な理由の一つは彼だよ」
このオフ、積年の夢をかなえるためにメジャーリーグへ旅立っていった守護神は、今シーズンの早い段階から、そう口にしていた。それは『女房役』への最大限の賛辞と言っていいだろう。
チームの優勝のみならず、個人でもベストナインとゴールデングラブ賞に輝くなど、今や中村はレギュラーどころかリーグを代表する捕手にまで成長した。それでも、これに満足するつもりはない。
「(今年は)自信にはなりましたけど、この1年で終わらせることなく、これから長いスパンをかけて常勝チームを作っていけるようなキャッチャーになりたいと思っています。古田さんっていう偉大な先輩がおられるので、少しでも近づけるように努力していきたいなと思います」
スワローズの黄金時代を築いた名捕手、古田敦也がプロ入りした1990年、中村はこの世に生を受けた。その偉大な先輩は、自身がヤクルトに入団した時には、既に数え切れないほどの功績を残してグラウンドを去っていた。プロに入ったばかりの中村にとって、その背中はあまりにも遠すぎた。
それから7年。ようやく偉大な先輩を追いかけるための、スタートラインに立つことができた。そして今年の契約更改では、その古田が着けた背番号27の継承にも言及があったという。
「打つほうでいうと、『今年(の成績)が最低ラインにしてくれ』って言われました。それで来年も1年間試合に出続けることができるのであれば『27番は遠くない』って。ゆくゆくは着けてみたいと思っていた番号ですけど、荷が重いなっていう気持ちもあります。でも、そこはすべての人に認めてもらって着けられるように、レベルアップしなくちゃいけないと思います」
それだけに来年は自身にとっても、そしてチームにとっても本当に大事なシーズンになる。
「やっぱり野球っていうのは守りがしっかりしてないと勝てないと思うんですよね。その一番大切な部分をキャッチャーとして任されているわけなんで、そういった気持ちを大切に持ちながらやりたいと思います」
優勝の陰に名捕手あり──。中村がよく口にする言葉である。『常勝チーム』を築き上げるためにも、あの偉大な先輩の背中を追いながら一歩一歩、名捕手への道を歩んでいく。