センター中島卓也の起用から考える、1年目の新庄野球【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#182】
新庄ビッグボス就任1年目がまもなく終わる。これまでにない采配や起用で大いに注目を集めたが、果たして2年目に向けて土台作りのシーズンになったのだろうか。
2022/09/17
強いファイターズを作ってほしい
そういえば夕刊紙が新庄ビッグボスの「自己責任論」に疑問を投げかけたことがあった。「これだけチャンスを与えてきて、(打率).220以下の選手は掴めなかったとしか判断できない」「自分のせい、それはどうしようもない」とコメントしたのを受けてだった。夕刊紙はそれを清宮、万波への叱咤激励(もしくはあてつけ)という風に解釈したようだが、僕はそこはどうでもいい。ただ「チャンスを与える」→「(結果は)自分のせい」という、選手個々に還元する思考が気になったのだ。僕らは2022年シーズンいっぱいを使って、選手個々の「自己責任をともなうチャレンジ」だけを見せられたのか。
新庄ビッグボスは今季を「トライアウト」と喩えたことがある。それが本当にトライアウトなら、「自己責任をともなうチャレンジ」そのものだから、このオフには脱落者が出るのだと思う。報道によると、ボスは(FA獲得を含む)即戦力補強を考えていて、来季は一気に優勝を狙うのだという。新本拠地でいきなり栄冠を勝ち取ればそれは絵になるだろう。派手好みの新庄ビッグボスにふさわしいストーリーだ。
だけど、野球というのはバラバラのパーツでやるものじゃない。個々の能力だけを見ていても野球にはならない。今季、僕が物足りないのはチームとして深まっていく志向が見られないことだ。いつも「常識を疑う新庄流」で、選手がフレッシュにチャレンジして、CS放送のカメラはベンチのビッグボスの表情ばかり追っている。ボスがニッコリするとか、首をかしげるとかが「評価」として映し出される。
だけどね、例えば盗塁死しすぎではないだろうか。「常識を疑う」チャレンジとして、出塁したら二盗を試みアウトになる。もう相手チームは「新庄流」を読んでるからウエストしてきたりする。せっかく出塁しても、選手を動かしてアウトになるから試合の流れが掴めない。勝とうとする作戦、勝とうとするチームより、「常識を疑う」「思い切ってチャレンジする」が優先されるきらいがある。
僕は来季、優勝するのは難しいと思う。優勝って簡単なことじゃないのだ。守備力も打線の繋がりも、つまり、チーム力のような部分がまったく上がっていない。そういうのは「ハイ、来季から始めますよー」というわけにいかない。僕だって本音は北広島でビッグボスの胴上げが見たいのだ。一歩一歩、強いファイターズを作ってほしいのだ。