【ドラ1の知られざる苦悩】巨人・元木大介(1)野球人生を決めた、父との約束
2022/10/14
産経新聞社
甲子園に元木あり
元木の名が広く知られるようになったのは、翌年の春の甲子園だった。
初戦は千葉県の市立柏だった。2年生投手の宮田正直が7回まで無安打に抑え、打線も元木の2打席連続本塁打など8対3で勝利した。2打席連続本塁打は史上5人目だった。続く福井県の北陸戦では宮田が3対0で完封。準々決勝では宮城県の仙台育英の大越基を打ち崩し5対2。横浜商業との準決勝では9対0と圧勝し、決勝に進出した。
決勝の相手は愛知県の東邦だった。前年の準優勝校である。
試合は上宮の宮田、そして東邦の山田喜久夫の両投手の投げ合いで、9回を終了して1対1。9年ぶりに決勝戦は延長に入った。
先に優勝を手元に引き寄せたのは上宮だった。10回表、二死一塁から四番元木、五番岡田浩一の安打で2対1とした。しかし10回裏、東邦は二死走者なしから、四球、内野安打で一、二塁。続くバッターがセンター前に打ち返し、同点。
さらに――。
打った選手は、ボールが捕手に戻ってきたのを見て、二塁を狙った。しかし、二塁にいた走者は塁に停まったままだった。そこで捕手が三塁にボールを投げた。三塁手はランナーを刺すために二塁手に送球。ところがこのボールがそれて、右翼側に転がっていった。さらにカバーに入っていた右翼手の前でバウンドが変わり、ボールがフェンスまで転がっていく――。その間に走者が本塁まで駆け抜けた。サヨナラ負けだった。
試合終了のサイレンが鳴った瞬間、元木はその場で泣き崩れた。
上宮はこの年、夏の甲子園にも出場し、準決勝まで進んでいる。そして個人としては甲子園通算本塁打6本という記録を残した。これは桑田真澄と並ぶ、歴代2位の記録だった。
(2)につづく
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CASE2 多田野数人(07年大学生・社会人ドラフト1巡目 北海道日本ハムファイターズ)
CASE3 的場寛一(99年ドラフト1位 阪神タイガース)
CASE4 古木克明 (98年ドラフト1位 横浜ベイスターズ)
CASE5 大越基(92年ドラフト1位 福岡ダイエーホークス)
CASE6 元木大介(90年ドラフト1位 読売ジャイアンツ)
CASE7 前田幸長(88年ドラフト1位 ロッテオリオンズ)
CASE8 荒木大輔 (82年ドラフト1位 ヤクルトスワローズ)