【ドラ1の知られざる苦悩】巨人・元木大介(2)逆指名批判、ホークス入団拒否の理由
2022/10/14
産経新聞社
ホークス入団拒否の影響
ホークスは縁がない球団ではない。元木が初めて所属したボーイズリーグは、福岡ダイエーホークスの前身、南海ホークスの関連チームだった
また、元木家との交渉をしたホークスのスカウトも南海ホークス出身で、父親と顔見知りだった。
「どこで知り合ったのか全然分からないんだけれど、親父も結構、南海の人を知っていた」
ドラフト直後、父親は元木にこう訊ねたという。
「ダイエーでもいいんじゃねえか? 折角誘ってくれているんだから」
しかし、元木は首を振った。
「いや、俺、もう自分で決めたことだから、申し訳ないけど断る。チャンスがあるんだったら俺、ジャイアンツでやりたい」
そこから父親は一切、ホークスに行けと言わなくなった。
元木は父親と一緒にホークスのスカウトと会っている。そのとき父親はこう釘を刺した。
「金の話をするのならば、すぐに出ていってください」
元木はその毅然とした態度が誇らしかった。
「俺の目の前ではっきり言った。自分の息子が(入団の条件として)金(の多寡)で動くとか、断るとかそういう風に思われるのが可哀想だって。そのとき、すげぇ親父だなと思った。味方がいてくれるというのが嬉しかった。だから交渉の席で金の話は一切出たことがない」
ホークスの指名を拒否したことで、元木を取り巻く景色は寒々としたものになった。
「家の前にずっと記者が張っていて、いつも、各社2、30人いた。本当に、俺、人殺しかなんか悪いことしたのかな、と思うぐらいだった。洗濯物干していたら写真撮られるし、お袋は家から一歩も出られない。買い物も行けない。だからお袋はノイローゼで倒れた」
(3)につづく
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CASE2 多田野数人(07年大学生・社会人ドラフト1巡目 北海道日本ハムファイターズ)
CASE3 的場寛一(99年ドラフト1位 阪神タイガース)
CASE4 古木克明 (98年ドラフト1位 横浜ベイスターズ)
CASE5 大越基(92年ドラフト1位 福岡ダイエーホークス)
CASE6 元木大介(90年ドラフト1位 読売ジャイアンツ)
CASE7 前田幸長(88年ドラフト1位 ロッテオリオンズ)
CASE8 荒木大輔 (82年ドラフト1位 ヤクルトスワローズ)