【ドラ1の知られざる苦悩】元ロッテ・前田幸長(3)ドラフト前に「大学進学」を口にした理由
2022/10/15
産経新聞社
準優勝で、プロから注目を集める結果に
大会屈指の左腕、前田幸長を擁する福岡第一は準決勝で沖縄水産と対戦している。九州勢が準決勝で対戦するのは初めてのことだった。
前田はこの準決勝で初めて自分らしいピッチングができたという。9回を投げきり、1失点。5対1の勝利。そして福岡第一は決勝に進出した。決勝の相手は、広島の広島商業だった。
この試合は、前田と広島商業の上野貴大のじりじりするような投手戦となった。8回を終わって0対0。そして9回にようやく点が入る。
〈九回一死後、岡田が高めのカーブを左翼線安打して出塁。二塁で揺さぶり、二死後に重広が同じカーブを右翼線二塁打、決勝の1点を奪った。それまでは、前田の切れのいい直球と変化球の前に抑えられていた。しかし、やや高めに浮いたところを逃さず、それもカーブに的を絞って流し打つという臨機応変の打法が、ここというときできるあたりは、さすがといえる〉(『朝日新聞』88年8月23日付)
前田はこう振り返る。
「高校のとき、カーブをカキーンと打たれたことは一度もないです。上手く打たれたというのは、甲子園の決勝で最後に1点獲られたとき。あれはカーブが真ん中に入ってきたのを打たれた。甘いボールではあったんですけれど」
広島商業はこの1点を守り、1対0で15年ぶり6度目の日本一となった。