【ドラ1の知られざる苦悩】元ロッテ・前田幸長(4)笑顔なき記者会見「なんでロッテなんだ」
2022/10/15
産経新聞社
「西武は何をやっているんだ」
ドラフト会議は11月24日、東京の九段にあるホテルグランドパレスで行われる。この日、前田はいつものように学校に行き、授業を受けていた。
「教頭先生がぼくのことを呼びに来たんです。当時、ドラフト1位は午前中に決まりました。呼びに来た段階で、1位で指名されたんだなと分かりました」
福岡第一からは、前田の他、野手の山之内健一が指名される可能性があった。そのため、学内に記者会見場を用意していた。前田は教頭の後に続いて、階段を下りていると新聞記者が耳元で囁いた。
「前田君、ロッテのドラフト1位みたいだけれど」
それを聞いた瞬間、前田は何かの間違いだと思ったという。
「ぼくの教室は4階で、記者会見場は1階だったんです。階段を下りながらずっと、おかしい、なんでロッテなんだ、西武は何をやっているんだと考えてました。記者会見場に座って、質問を受けたのですが、何を喋ったのかも覚えていない。笑顔の一つもなかった。記者からの質問は、まったく頭に入らず、ずっと西武は何をやっていたんだ、と心の中でつぶやいていましたね」