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【ドラ1の知られざる苦悩】元ロッテ・前田幸長(4)笑顔なき記者会見「なんでロッテなんだ」

2022/10/15

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産経新聞社



球界の寝業師による大どんでん返し

 スポーツ紙では、西武の1位指名は、プリンスホテルの石井丈裕となっていた。石井はプロ入り拒否を表明していたが、プリンスホテルは西武の系列企業である。西武がプロ入り拒否を言い含めて、抱え込んでいることは間違いなかった。
 
 ところが、西武が指名したのは、NTT四国の渡辺智男だった。渡辺もまた、右ヒジ遊離軟骨除去手術を理由にプロ入りを拒否していた。他球団が二の足を踏む中、西武は〝単独指名〟したのだ。
 
 ロッテは日立製作所の右腕投手、酒井勉を1位指名していた。ところが、オリックスとの競合でくじ引きとなった。外れくじを引き、〝外れ1位〟として前田を指名したのだ。
 
 ちなみに西武は2位で、石井を指名。渡辺、石井という好投手を競合なしで手に入れた。
 
 恐らく――。
 

 
 西武の管理部長、根本陸夫はこの二人に加えて、同じくプロ入り拒否を表明させて、他球団を牽制していた前田を獲るつもりだった。渡辺、石井、そして前田のうち、最後まで誰を1位指名するか悩んでいた。前出の報知新聞の中島氏は、その内情を掴んでいたのだろう。
 
 しかし、前田は根本が手配した大学のセレクションを受けず、〝裏工作〟は不首尾に終わっていた。指名すればプロ入りすると踏んだロッテが、酒井を外した後、前田を1位指名した。
 
 また、前田によるとドラフト当日の朝、ヤクルトのスカウトから自宅に電話があったという。
 
 ヤクルトが1位指名を考えていた川崎憲次郎は複数球団からの重複が確実だった。前田を1位指名すれば入ってくれるのかという確認だった。しかし、この日、自宅には前田も父親もいなかった。兄が電話に出て「わからない」と答えた。ヤクルトは予定通り川崎を1位指名、やはり巨人と重複することになった。そして、くじで引き当て、獲得に成功している。

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