【ドラ1の知られざる苦悩】元ロッテ・前田幸長(5)もし巨人でプロ入りしていたら…
2022/10/15
産経新聞社
「そうだよなぁ。テレビ出ていないもんな」
1988年のドラフト会議でロッテオリオンズから1位指名を受けた前田幸長は、完成したばかりの浦和の選手寮に入ることになった。そこから川崎球場での合同自主トレーニングに通うことになった。
練習が始まり、ある先輩選手から前田は声をかけられた。
「俺の名前知っているか?」
正直に「すいません、知りません」と頭を下げると、その選手は苦笑いしてこう言った。
「そうか、そうだよなぁ。(ロッテの選手は)テレビ出ていないもんな」
その率直な物言いに前田は思わず笑ってしまったという。
前田がロッテに入る前、名前を知っていたのは、投手の村田兆治、牛島和彦、そして甲子園での投球をテレビで見ていた前年ドラフト1位、伊良部秀輝だけだった。
「あとから愛甲(猛)さんがいるわ、という感じですね。普通はプロ入り前に、選手名鑑を買って、先輩の顔と名前を覚えてから行くのかもしれませんけど、ぼくはしなかった」