【ドラ1の知られざる苦悩】元ロッテ・前田幸長(5)もし巨人でプロ入りしていたら…
2022/10/15
産経新聞社
調子に乗っていた1年目、プロの厳しさを痛感
前田が閉口したのは、川崎球場の粗末さだった。
「プロ野球の球場なのに、こんなに汚いんだと。平和台(球場)のほうが綺麗じゃないかと。ロッカーも半端なく汚かったですね」
また、実力主義である、プロ野球の世界にも〝上下関係〟があることも知った。
「投手陣は最初、沖縄でキャンプを張ったんです。そこで練習が終わって、部屋に帰ってシャワーを浴びたんです。そうしたら、教育係の平沼(定晴)さんに帽子を叩きつけて怒られました。(ロッテでは)同室の先輩よりも先にシャワーを浴びたらいけなかったんですね」
キャンプから一軍に帯同した前田は、主力投手と共にブルペンに入っている。
「荘勝雄さんとか園川(一美)さんとかがいましたね。速いと思ったのは、村田兆治さん。ラブ(伊良部)さんも速かったんですが、まだくすぶっている時期だったので、それほどでもなかった。だから周りの投手を見ても、やべぇー、レベルが高いとか思わなかったんですよ。なぜだから分からないけど、勝手に自分はやっていけると思い込んでいましたね」
とはいえ、プロ野球は高校野球で対戦していた打者とは水準が違った。
「今でも忘れないんですけれど、紅白戦で登板して、伊藤史生さんと対戦したんです。ぼくより、4、5歳上で、これから売り出そうかという感じで一軍キャンプに抜てきされていたんです。その人に初球ホームランを打たれた。おお、すげーなと。ある程度のところに投げれば初球は見逃すでしょって、今まで初球を振ってくるという感覚がなかった。そこからちゃんとやらないといけないと思ったんです」
ちゃんとやらなくても勝てると思い込んでいたんでしょうね、調子に乗ってましたから、と前田はからから笑った。