【ドラ1の知られざる苦悩】元横浜・古木克明(1)ホームランの基礎を作った建築士の父
2022/10/16
産経新聞社
小学校時代にすでに大器の片りん
野球の裏側には理不尽さがぺったりと貼りついている。
打者がバットの芯にボールを当てて飛ばしたとしても、その先に野手が待ち構えていることがある。一方、当たりそこねの、緩い球が野手の間に落ちて安打となる、なんてこともある。そのため熟練の打者になるとわざと芯を外し、野手のいない場所に球を落とすこともあるという。
そうした野手の配置に頓着しない種類の打者も存在する。それは外野手の頭を軽々と越えていくホームランバッターである。彼らのバットから放たれたボールは、優雅な放物線を描いて、ゆっくりとスタンドに消えていく。こうしたホームランを量産できるのは、プロの中でもごく一握りの男たちに過ぎない。そして彼らは球を遠くに飛ばすことに強い美学とこだわりを持っていることが多い。
古木克明はその一人だった。
1980年11月10日、三重県松阪市で古木は生まれている。二人きょうだいで、妹が一人いる。
「子どもの頃から躯は人一倍でかかったです。小学校の入学式のとき141センチあったはずです。もう頭一つ、いや二つぐらい飛び抜けている感じで。太っちょでいじめられっ子。泣き虫でしたね」
野球を始めたのは父親の影響だった。
「田舎だったので、庭や広場で親父とキャッチボールをしてました。最初は楽しいんですけれど、ぼくは10球ぐらい投げたら満足してしまう。でも親父はやめさせてくれないから、楽しくなくなってしまう」