【ドラ1の知られざる苦悩】元阪神・的場寛一(4)「ぼくは出過ぎた杭になれなかった。実力がなかった」
2022/10/16
産経新聞社
大切さを実感したのは「自由契約になったぐらいのとき」
内野手の前にボールが転がってくるとする。ボールをグローブで捕球、利き腕で握る。プロの内野手は、握った瞬間にボールの縫い目を感じることが出来るという。
「もちろん余裕があるときは投げやすいように握り直します。ただ、すぐに投げないといけないときもありますよね。この縫い目でそのまま投げたらスライダーみたいな回転になる。ファーストが獲りにくいというときは、敢えてシュート回転で投げたりする」
転がったボールを拾って、わしづかみのような形で送球しなければならないこともある。そうした際は、腕の振りで回転を調節する。
「野球の試合運びはゆっくりですけれど、水面下では素早い判断が要求されるんです。判断のために、色んな情報を頭に入れておかないといけない。ランナーがどこにいるのか、あるいは打者の足の速さ。一瞬、一瞬のプレー、ちょっとしたプレーで試合の流れが変わることがある。だから細かなプレーをおろそかにしてはならない」
そんな風に考えられるようになったのは、自由契約になったぐらいのときでした、と的場は自嘲気味に言った。