新外国人野手、有望株は阪神のヘイグとロッテのナバーロ、オリックスのボグセビック【広尾晃の「ネタになる記録ばなし」】
ブログ「野球の記録で話したい」を運営中で『プロ野球解説者を解説する』(イーストプレス刊)の著者でもある広尾晃氏。当WEBサイトでは、MLBとNPBの記録をテーマに、週2回、野球ファンがいつもと違う視点で野球を楽しめるコラムを提供していく。今回は新外国人(野手編)についてだ。
2016/01/14
オリックスの新外国人は期待大
アメリカでは、MLBのキャンプが近づくにつれて、FA選手の去就が決まってくる。NPBの各球団は今後も選手獲得に動く可能性があるが、新外国人野手は今のところ8人。MLB、マイナーなどの実績とともに紹介したい。
NPBにやってくる新外国人選手は、MLBでの実績が乏しい場合が多いので、注目すべきはマイナーリーグの成績だ。
制球力が良く、多彩な変化球を繰り出すNPBの投手に対応できるのは、長打力がある打者ではなく、ミートが巧みで打率が高い選手だ。そして、選球眼が良い打者のほうが適応できる可能性が高い。その観点でデータを見ていきたい。
ロッテのヤマイコ・ナバーロはドミニカ出身。MLBでの実績は乏しいが、ここ2年、KBO(韓国プロ野球)のサムソンで主軸打者として活躍。2015年は外国人選手歴代1位の48本塁打を打った。それ以上に注目すべきは、四球の多さだ。KBOではなんと四球のほうが三振よりも多かった。マイナーでもISOの数値は高い。MLBでは二塁、三塁、遊撃、マイナーでは外野も守っている。クルーズのように守備の名手の評判はないが、使い勝手もよく、大いに期待できるのではないか。
オリックスの2人は、MLBでの実績がほぼ同程度。マイナーでの成績も大差がない。ともに中距離打者なのでNPBで活躍する可能性はある。右打者のモレルはダイナミックな三塁守備で有名だが、広角打法でミートも巧みだが選球眼は良くない。ドラフト1巡目でアストロズに入った左打者のボグセビックは、出塁率が高く、盗塁数も多い。それに、外野の守備範囲も広いところが魅力のエリートだ。
楽天のアマダーはメキシコ育ちで、2007年からメキシコのトップリーグであるメキシカンリーグでプレーしていた。17試合だけアメリカのAAAに出場した経歴があるも、データでは体重135㎏と書かれているものや、140㎏以上とするデータもある。NPBの試合に出れば、公称130㎏の李大浩を上回るNPB史上最重量選手になる。 アマダーのメキシカンリーグでの成績は優秀だが、割り引いて考える必要があるだろう。
ヘイグはマートンと同様のタイプ
巨人のギャレット・ジョーンズは、昨年までヤンキースでプレー。故障で戦線離脱したマーク・タシェアラの代わりに一塁を守り、5,6番を打つこともあった。実績は十分な一方で、対左の打率は.130と極端に左投手に弱く、出塁率もよくなかったので、右投手の時だけ起用されるツープラトンで使われた。メジャーで122本塁打の実績はあるが、大きな欠点もある打者だと言ってよいだろう。
阪神のマット・ヘイグは一塁、三塁を無難にこなす。MLBではパワー不足とみなされ、定着できなかったが、ミートの巧みな中距離打者であり、マイナーの通算打率は3割を超している。IsoDも優秀だ。
マートンもアメリカでは同様のタイプだった。外野手としてやや難があったマートンとは異なり、守備でも貢献が期待できる。
広島のプライディはがっちりした体格、右投げ左打ちの外野手。キャリアの大部分をマイナーで過ごす。134本塁打を打っているものの三振が多く、選球眼は良くない。ただ、223盗塁しているのが注目される。
中日のビシエドは、キューバ出身。19歳でアメリカに亡命し、4年総額1000万ドルでホワイトソックスに入団すると大いに期待された。渡米して3年目には自己最高の25本塁打を打つなど長打力を発揮したが、極端な早打ちで四球が非常に少なかった。また、外野守備にも難があるとされ、次第に出場機会を失って昨年、解雇された。有名選手でもあり、勢いに乗ればパワーを発揮するだろうが、NPBに来て成功するタイプの選手とは言えないだろう。
DeNAのジェイミー・ロマックもキャリアの大部分をマイナーでプレー。マイナー通算200本塁打と長打力がある上に、選球眼もよい。ただ、三振数も多くマイナーでの打率も.255とあまり良くないが、外野手としては守備範囲が広いので注目したい。
こう見ていくと、新外国人で最も期待できるのは阪神のマット・ヘイグ、続いてオリックスのボグセビックではないか。
もっとも、NPBに来てキャンプでコーチから日本人投手への対応策を教えられ、モデルチェンジする外国人選手や、異なったタイプに進化して活躍する選手もいる。そういう未知の可能性も含めて注目したい。