ドジャースは2年間の休養を想定も。8年契約の前田、年間200イニングが成功ライン【小宮山悟の眼】
前田健太が念願のメジャー移籍を果たした。出来高重視、8年という異例づくしの契約内容だが決して前田にとって不利なものではない。
2016/01/26
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故障発生も覚悟の上
ちなみに、そのメディカルチェックとは具体的にどういう診察をするのか。私がかつてニューヨーク・メッツに入団した際の内容を紹介したい。メインとなるチェックは全身のMRI検査。それに加えてドクターからの問診もあり、私の場合は「何か申告することはないか?」と聞かれたので、たとえば「過去にここに打球を受けて、骨が少し変形しているかもしれない」という旨の報告をした。
また、ドクターが実際に体に触り、関節にテンションをかけて痛みがないか確認したりする触診のような検査もあった。そういう段階をすべて経て、はじめてお墨付きをもらえるのだ。MRIで異常が発見された場合はもちろん、少しでもドクターが「おかしいな!?」と診断する箇所があれば、さらに精密に検査していくことになる。
ドジャースは、その過程の中で前田の肘に問題があると断定した。
そして、その症状を過去の膨大なメディカルチェックのデータと照らし合わせて、前田が数年のうちにトミージョン手術を受けることになると確信しているのだろう。そのための8年契約だ。
もっと簡単にいえば、2、3年プレーした後に、故障が発症。手術とリハビリを入れて2年の休養。復帰後に、また2、3年プレーする。ドジャースサイドは、そういう8シーズンを描いていると思う。
2年間のブランクがいつ来るかハッキリとはわからない。そのリスクをできるだけ軽減するための出来高偏重の契約だ。決してドジャースが、前田の実力を疑っているわけではない。それは出来高の額の大きさが物語っている。もし、満額の出来高を手にしたとしても、ドジャースにとって損はない。むしろ、それだけの数字を残してほしいと願っているはずだ。
一方、前田サイドには、8年の長期契約年数は、ドジャースの誠意と映ったのだろう。肘の状態は、日本時代から何度もメディカルチェックしているだろうから、本人を含めて把握しているに違いない。
今の状態でも投げ続ける自信があるし、8シーズンをブランクなく全うするつもりだろう。だからこそ、出来高重視でも関係ないと判断したわけだ。そして、なにより本人の「メジャーで投げたい」という思いが、多少の不利な条件に勝ったということだろう。
以上のような両者の主張・事情をぶつけ合った結果、勝機の出来高重視の契約に落ち着いたわけだ。