正捕手奪取のキーワード。リードを「見える化」する捕手防御率【広尾晃の「ネタになる記録ばなし」】
ブログ「野球の記録で話したい」を運営中で『プロ野球解説者を解説する』(イーストプレス刊)の著者でもある広尾晃氏。当WEBサイトでは、MLBとNPBの記録をテーマに、週2回、野球ファンがいつもと違う視点で野球を楽しめるコラムを提供していく。今回は捕手防御率についてだ。
2016/01/22
正捕手争いの一つの指標に
捕手の能力には、打撃、守備に加えて投手のリードという部分がある。これは数値化が難しいとされてきた。
MLBでは、捕手のリード力を知る一端としてcERA(捕手防御率)というデータが考案されている。
投手同様、捕手が受けた試合での自責点を捕手の出場イニング数で割って9をかけたもの。9回を受ければ自責点は何点になるかという数字だ。
cERAは投手の力量に大きく左右される。別のチームの捕手のcERAでの単純な比較はあまり意味がない。チーム防御率との差異や、同じチームの他の捕手との差異で考える必要がある。
2015年の両リーグの先発投手について、cERAと勝敗などの成績を出した。cERAとチーム防御率の差異も出した。100イニング以上出場の捕手。Baseball Reference等を参照の上、作成した。
まずはパリーグからだ。
出場イニング数に違いがあるため、この数字だけで一概には結論づけられない。ソフトバンクは、2015年、髙谷裕亮を多く起用した。cERAの数字を見ればわかるように鶴岡慎也、細川亨という優秀な2人のベテラン捕手の存在が控えているのはチームにとっての強みだ。
日本ハムは個性の違う3人の捕手。今季から背番号が「8」になり、野手転向ともいわれる近藤健介が実は一番cERAが良かった。
西武は炭谷銀仁朗がほぼ一人でマスクをかぶっており、まさにチームの要だ。
ロッテは、出場試合数もcERAも田村龍弘が吉田裕太よりずば抜けてよい。正捕手に一番近いといえるだろう。
オリックスは、リーグを代表する捕手と言われる伊藤光よりも山崎勝己のほうがcERAが良い。しかも山崎は先発投手の勝敗で勝ち越している。2015年に伊藤の出場機会が減ったことと関連性があるのではないか。
楽天は嶋基宏と小関翔太ではかなり差がありそうだ。