マエケンマネーの地元還元は画期的な策――地域密着型球団に求められる「社会的責任」【経営学から見たプロ野球】
広島東洋カープの前田健太がロサンゼルス・ドジャースへ移籍するが、松田オーナーは譲渡金の一部を地元やキャンプ地に財政面で還元する意向を示した。
2016/01/27
プロ球団に必要な「CSR」の視点
筆者は、現在のプロスポーツ球団、特に地方都市へ本拠地を置く球団において、勝利のみを追求した「強化」の経営は終焉したと考えている。
プロスポーツ球団の事業としては、お客様にいい試合を見せる興業が主である。そのために選手補強などを行い、チームを強化する。Jリーグになれば、これにユース世代などを育てる「育成」や競技自体の普及や地域貢献を行う「普及」も絡んでくる。
この育成や普及の観点に「CSR」という観点も、今後付け加えられるのではないか。CSR (Corporate Social Responsibility)は、企業の社会的責任と言われ、一般企業でも浸透しはじめている。
すなわち、企業は株主ばかりでなく、顧客、従業員、取引相手、さらには地域住民や行政といったステークホルダー(利害関係者)の利益を実現することが求められており、特に社会的に影響が大きく、公共財ともいわれるプロスポーツ球団はこれを意識して経営を担うのは、もはや当然の流れになっている。
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