56発の村上宗隆だがwRAAでは王に届かず セイバーメトリクスの視点で過去の打撃ベスト10を振り返ろう ~2022年編~
2022/12/05
産経新聞社
2022年のパ・リーグ
チーム 試合 勝率 得点 失点 得失点差
オリックス 143 .539 490 458 32
ソフトバンク 143 .539 555 471 84
西武 143 .514 464 448 16
楽天 143 .493 533 522 11
ロッテ 143 .486 501 536 -35
日本ハム 143 .421 463 534 -71
2022年はwRAA52.2をマークした吉田正尚(オリックス)が2019年以来2度目の1位に輝いている。出塁率と1打席当たりの打撃貢献を表すwOBA(※3)でもリーグをリード。前年はwOBAで1位となりながら欠場がかさんだためにwRAAでは柳田悠岐(ソフトバンク)の後塵を拝することとなったが、今季は双方の首位を獲得した。吉田は2018年にwRAA4位となって以後5年間で、wRAA、wOBAの首位をそれぞれ2回獲得している。
2位には本塁打王、打点王、最高長打率を獲得した山川穂高(西武)がランクイン。今季吉田は24試合、山川も14試合とともに一定の欠場があった。ただ今季ベスト10の中にはほかにも欠場選手が多く、欠場を10試合以下にとどめたのはわずか3選手だけであった。選手にも多数の感染者を出した新型コロナウイルスの影響の大きさを思い知らされるとともに、多くの選手が深刻な状況にならず復帰したことは感染症が日常的な存在へと変わりつつある現状を示しているように感じる。
本企画2021年版の時点で投手優位が少々進みすぎたと記したが、今季は中立に戻るどころか輪をかけてバランスが崩れてしまった。リーグwOBA(投手の打席除く)が3割を下回ったが、これは低反発球時代にあたる2012年以来のことである。極端な投打バランスは選手の育成や生き残りにバイアスをかける。国際的に見た日本野球のレベル向上の観点から、これが正しい方向であるかは疑問である。筆者としてはリーグwOBAが.320程度にはなるよう中立方向への回帰を目指してほしい。
今季ブレイク組では5位の松本剛(日本ハム)が投手優位をはね返して自己ベストのシーズンを過ごし、首位打者を獲得。前年までの4年間の打席数を合計しても規定打席に届かない状態からの唐突な活躍であった。このまま定着すれば稀に見る遅咲き選手となる。松本のほか、今宮健太(ソフトバンク)、辰己涼介(楽天)中川圭太(オリックス)と、ベスト10新顔が4人を数えた。
ベスト10圏外では規定打席不足の近藤健介を挙げる。打率.302、8本塁打と目立たない成績ながら相変わらずの高い出塁能力を発揮。wOBA(.385)はリーグ3位相当、積み上げのwRAA(28.0)はリーグ4位に相当する好成績であった。